研究課題/領域番号 |
22360412
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
福山 敦彦 宮崎大学, 工学部, 准教授 (10264368)
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キーワード | 多接合太陽電池 / 熱エネルギー損失測定 / 圧電素子光熱変換分光法 / 非発光再結合 |
研究概要 |
本研究では、光熱変換法の信号発生原理を応用し、サンプル内に発生した熱の拡散長を制御することで、多接合構造太陽電池の変換効率低下の原因となる熱エネルギー損失、つまりキャリアの再結合損失の深さ方向断面プロファイルを測定する新たな評価手法を開発することである。この結果得られる知見を太陽電池作製プロセスへフィードバックさせて、現行の三接合構造太陽電池の更なる変換効率向上を行う。更には四接合あるいは五接合構造といった次世代の高効率多接合構造太陽電池実現のための重要な非破壊評価術として同手法を確立させる事が本研究の要旨である。 本年度は、昨年度構築した一定光量および一定フォトン数照射型の圧電素子光熱変換分光装置(CP-PPT)のSIN比向上および妥当性検証実験が目的であった。SIN比向上対策としては試料に照射される光量の調整や前段プリアンプの設置等で対処した。 構築したCP-PPTを、次世代多接合太陽電池として期待されている、量子井戸構造型太陽電池材料に適用した。同太陽電池材料では、多接合化による電流ミスマッチを解消するために光吸収層に量子井戸構造を挿入したものである。CP-PPT信号は量子井戸層での非発光再結合によるキャリア損失を反映していることから、その温度変化を測定することにより、量子井戸層からのキャリア脱出および発光・非発光再結合キャリア損失の活性化エネルギーを算出した。得られた活性化エネルギーはバンドプロファイルから見積もられた値より小さく、量子井戸層でのキャリア輸送においてトンネリング等の過程を考慮すべきであることを実験的に初めて明確にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的であった、太陽電池吸収層でのキャリア再結合損失を検出できる新たな評価技術であることは実証できつつあるが、多接合太陽電池構造の深さ方向プロファイル測定のためには、検出光断続周波数の広範囲での変化が必要である。しかしながら現在の測定プログラムではその数値を任意に変化させることが出来ないため、測定プログラムの改訂作業を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
測定システムの改良と測定データの検証を引き続き実施する。前者は検出光断続周波数変化が可能な測定プログラムの改良であり、これによって多接合構造材料の深さ方向プロファイル測定が可能となる。もう一つの測定データの検証は、太陽電池での非発光再結合キャリア損失を実際に測定出来ているかどうかを、発光再結合および再結合せずに表面へ到達するキャリアをそれぞれ検出するP上およびSPV信号を同一材料で取得し、比較・検討をおこなう。
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