研究課題/領域番号 |
22360412
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
福山 敦彦 宮崎大学, 工学部, 准教授 (10264368)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 多接合太陽電池 / 熱エネルギー損失測定 / 圧電素子光熱変換分光法 / 非発光再結合 |
研究概要 |
本研究では、光熱変換法の信号発生原理を応用し、サンプル内に発生した熱の拡散長を制御することで、多接合構造太陽電池の変換効率低下の原因となる熱エネルギー損失、つまりキャリアの再結合損失の深さ方向断面プロファイルを測定する新たな評価手法を開発することである。この結果得られる知見を太陽電池作製プロセスへフィードバックさせて、現行の三接合構造太陽電池の更なる変換効率向上を行う。更には四接合あるいは五接合構造といった次世代の高効率多接合構造太陽電池実現のための重要な非破壊評価術として同手法を確立させる事が本研究の要旨である。 今年度は、構築したCP-PPTを次世代多接合太陽電池として期待されている量子井戸構造型太陽電池材料に適用した。CP-PPT信号の温度変化を測定することにより、量子井戸層からのキャリア脱出および発光・非発光再結合キャリア損失の活性化エネルギーを算出した。得られた活性化エネルギーはバンドプロファイルから見積もられた値より小さく、量子井戸層でのキャリア輸送においてトンネリング等の過程を考慮すべきであることを実験的に初めて明確にした。また、新たな手法として断続周波数を変化させてCP-PPTスペクトル測定を実施したところ、発生した熱波が検出器まで到達しない高周波数領域においても量子井戸起因のCP-PPT信号を検出した。これは量子井戸から漏れ出したキャリアの拡散現象に起因するものである。量子井戸構造太陽電池では量子井戸内のキャリア再結合により効率低下が懸念されるが、室温付近では十分光励起キャリアを取り出せていることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は断続周波数を任意に制御できない測定プログラムであったため、有意なデータ取得が出来なかったが、業者との共同作業により改定作業を行った。その結果、4~4000Hzの範囲で断続周波数変化によって熱拡散長を制御したCP-PPT測定が可能となった。これを多層構造である量子井戸構造太陽電池に適用した結果、次世代太陽電池として期待されている量子井戸構造太陽電池のキャリア輸送特性、特にキャリア発生と量子井戸内での再結合損失、量子井戸外への取り出し効率に関する知見を得るに至っている。今後は各層での発熱を分離、つまり深さ方向のプロファイルを得るために光熱変換信号の理論計算を合わせておこない、CP-PPT法の実証を行う。
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今後の研究の推進方策 |
今年度実施した量子井戸構造太陽電池で得られた周波数変化によるCP-PPT信号の解析を引き続きおこなう。今年度実施内容から、非発光再結合損失の深さ方向の情報を得ていることは確信できたが、定量的な解析には至らなかった。その理由が今年度用いたサンプルの吸収層にある量子井戸構造でのキャリア振る舞いが非常に複雑であったためである。このことから、新たに複数のp-n接合を単純に積層させた多接合太陽電池サンプルを用意し、周波数測定変化によるCP-PPTスペクトルを取得する。また、半導体内を拡散するキャリアの考慮も取り入れた光熱変換信号の理論計算も併せておこない、深さ方向プロファイル取得の実証を行う。
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