研究課題/領域番号 |
22370003
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
関口 睦夫 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (00037342)
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研究分担者 |
高木 康光 福岡歯科大学, 歯学部, 准教授 (20212003)
伊東 理世子 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (10140865)
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キーワード | RNA / 前駆体ヌクレオチド / 老化 / 発現異常 / 酸化ストレス / 分解酵素 / RNA結合タンパク質 / 8-オキソグアニン |
研究概要 |
生体内の代謝によって生じる活性酸素によって核酸やその前駆体ヌクレオチドが酸化されるが、それによって異常なタンパク質がつくられ、それは生体の機能低下や老化の進行をもたらすと考えられる。これまでの私達の研究の結果、ヒトを含む哺乳動物の細胞は、酸化されたヌクレオチドを分解して排除する酵素系をもつことが明らかになった。そのうちMTH1(NUDT1)タンパク質はその酵素的性質が明らかになっており、その欠損マウスではがんを多発することがわかった。それを補完すると考えられる2つの酵素MTH2とMTH3を今回見出したので、その基質特異性や作用機構を調べた。その結果3種の酵素は酸化グアニン(8-オキソグアニン)を含むDNAおよびRNA前駆体をモノリン酸分解する活性をもつが、それぞれ特有の働きをすることが明らかとなった。特にMTH1とMTH3は8-オキソグアニンを含むリボヌクレオシド三リン酸とニリン酸をそれぞれ分解するので、両者の機能分担が注目される。なお3種のMTHタンパク質の他に、NUDT5も酸化グアニンを含むヌクレオチドを分解する活性をもつが、その活性の至適pHは10.5であったので、その生理的機能は限定されると考えた。このような前駆体ヌクレオチドのレベルで働く機構に加えて、細胞は酸化されたRNAを認識してそれを分解する機構をもっと考えられる。そこで酸化されたRNAに特異的に結合するタンパク質をヒトの細胞抽出液から検索し、これまでに3種のタンパク質を同定することができた。そのうちHNRNPD(AUF1)とHNRNPCの発現をsiRNAを用いて抑えると、細胞の過酸化水素に対する感受性が増加することがわかった。 これらのタンパク質は酸化RNAを排除する機構で共同して働いている可能性が高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
老化の進行を抑える上で重要な役割を果たすと考えられる2つの機構に関わる因子として、(1)酸化されたRNA合成前駆体を分解する酵素、(2)酸化されたRNAに特異的に結合するタンパク質を同定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究で同定されたタンパク質が、実際に細胞内での酸化されたRNAの排除においてどのように働いているか、またこれらのタンパク質の発現を抑えた時に細胞や動物(マウス)はどのような変化を示すかを明らかにする必要がある。
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