研究課題/領域番号 |
22370003
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
関口 睦夫 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (00037342)
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研究分担者 |
伊東 理世子 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (10140865)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 遺伝子 / 核酸 / 老化 / がん / ゲノム / 酵素 / ストレス / タンパク質 |
研究概要 |
老化の促進に関わる酸化グアニンを排除するため、生体は①酸化されたグアニン・ヌクレオチドを分解したり、②酸化グアニンをもつRNAを排除する機構をもつ。①の機構を荷うと考えられる酵素の同定を進め、これまでにMTH1(NUDT1)、MTH2(NUDT15)、NUDT5の3つの酵素が8-オキソグアニンを含むDNAおよびRNA合成の前駆体を分解することを明らかにした。我々はさらにMTH3(NUDT18)という新規の酵素を同定し、これも同様な活性をもつことを明らかにした。これらの酵素は、細胞のおかれた状況や組織の種類などによってその発現レベルを変えて機能していると考えられる。 8-オキソグアニンがDNAやRNA中にどのぐらい蓄積しているかを知るため正常マウス(SAMR1)と老化促進マウス(SAMP8)の各種組織についてLC-MS/MSを用いて測定を行った。その結果、脳、肺、心臓、肝臓、腎臓および精巣においてDNAおよびRNA中の8-オキソグアニンの含有量が増加し、その増加率は老化促進マウスにおいてより高かった。このことは、酸化塩基の蓄積が老化の促進原因となることを示唆している。 DNA中に存在する酸化グアニンはDNA修復酵素によって認識され、DNAから排除されることがこれまでの研究で明らかにされている。それに対し、RNA中に生じた酸化グアニンの運命についてはこれまで明らかでなかったので、この問題②について研究を進めた。これまでに酸化グアニンを含むRNAに特異的に結合するタンパク質(AUF1など)の同定に成功したので、このようなタンパク質を欠損した細胞株の作出をめざして研究を進めている。このような細胞株が老化指標マーカーをよく示すようになるかを含めて今後さらに検討したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「本年度の研究実績の概要」および「発表論文」の項で示した通り、「酸化ストレスによる老化を抑える遺伝子系」について予想以上に研究が進みつつある。これは分子レベル、細胞レベルと個体レベルの研究を並行して進めてきた結果、新規の酵素の発見が遺伝子の同定をもたらし、それがその遺伝子を欠く細胞株やノックアウトマウスの作出につながったからである。今後さらに研究者間の有機的な連係によって研究を飛躍的に進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
老化の機構の解明は、個々人の健康の保持に留まらず社会的にも重要な課題である。これまでの研究で、我々は細胞を老化から護っている機構の解明に重要な手がかりを得たと考えている。本研究は平成25年度で終了するが、それまでに研究を総括し、さらにそれ以降の研究の進展をはかるための方策を樹てたいと考えている。
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