研究課題/領域番号 |
22370004
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研究機関 | 独立行政法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
丁 大橋 独立行政法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所・バイオICT研究室, 主任研究員 (50359080)
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キーワード | 染色体 / 遺伝学 / 減数分裂 / 非コードRNA |
研究概要 |
本申請研究では、相同染色体の相互認識機構の解明を目指し、分裂酵母減数分裂期における相同組換え非依存的相同染色体の対合機構の同定・解析を目的としている。昨年度までの研究で、分裂酵母第2染色体のsme2遺伝子座が対合のホットスポットであり、相同染色体の認識に寄与することを明らかにした。今年度の目標は更なる対合のホットスポットの同定およびsme2対合ホットスポットに寄与する分子メカニズムの解析である。昨年度に同定した新規の対合ホットスポットを他の染色上に移動し、ectopicな対合を引き起こせるかについて検討したが、そのような効果が得られなかった。一方、sme2遺伝子座の広がり効果を調べた結果、sme2から200kb離れても、対合を促進する効果があることが分かったので、今後新規ホットスポットの対合活性に寄与する真のDNA断片を同定する場合、染色体上の範囲を広めで捜索する必要があることが判明された。 一方、sme2対合サイトの高い対合活性に寄与する分子機構について、興味深い知見を得られた。sme2RNAに強く結合するMmi1因子が存在することが知られている。Mmi1は減数分裂特異的メッセンジャーRNAを選択的に除去することによって減数分裂の開始を制御するタンパク質である。共同研究先の東大山本研とともに、sme2RNAもMmi1の制御を受けること、さらにMmi1の変異株では、sme2RNAの量が増えることがわかった(Yamashita et al.,Open Biology2012)。面白いことに、Mmi1の変異株で、sme2サイトの対合率が野生株よりも大幅に促進され、対合には染色体上の局所に集積するRNAの量に比例することが示唆された。今後は染色体結合RNAを同定する方向で研究を進めたい。 これまでの研究成果をまとめた論文は「サイエンス」誌に掲載確定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請で記載した計画の方向と違ったが、予想外の研究結果を得られたので、研究の新しい方向が見えてきた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究によって、RNAの染色体上の蓄積が相同染色体の認識・対合に寄与することが明らかになったので、本研究課題の今後の推進にはRNA-IPなどの手法を用いてゲノムワイドに減数分裂期染色体に結合するRNAおよびRNAの多量蓄積染色体領域の同定を目指したい。
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