本申請研究では、相同染色体の相互認識機構の解明を目指し、分裂酵母減数分裂期における相同組換え非依存的相同染色体の対合機構の同定・解析を目的としている。昨年度までの研究で、分裂酵母第2染色体のsme2遺伝子座が対合のホットスポットであり、sme2遺伝子座から減数分裂期特異的に転写されるnon-coding RNA meiRNA-Lがsme2遺伝子座に集積し、相同染色体の認識に寄与することを明らかにした。これまでの研究成果をまとめた論文が「サイエンス」誌に掲載された。 今年度はゲノムワイドにlacO反復配列を挿入し、網羅的に染色体の対合のダイナミクスを調べて、特に減数分裂期前期の早いタイミングで、且つ減数分裂期組換えの開始反応であるDNA二重鎖切断(DSB)非依存的に高対合頻度を示し染色体ローカスを発見することを目標としている。これまでに標識したローカスの対合活性を調べた結果、一部のローカスが高い対合活性を示すものの、すべてDNA二重切断因子に依存した対合活性で、目的とするローカスではなかった。今年度ではさらに約100箇所を選んで、平均100kb以内の間隔でゲノム全体をカバーできるように設計した。挿入する場所は基本的に遺伝子と遺伝子の間のintergenic配列部分で、また最新のデータベースを参照し、非コードRNAのコード領域を避けて、なるべくゲノム機能に影響を与えないように挿入している。現在挿入済みサイトの対合を順次観察中である。今までの観察結果、テロメアから比較的近い染色体領域では、減数分裂期前期の初期に一時的に顕著な高い対合頻度を示し、その後、対合頻度が一度下がってから再び上昇することが分かった。この現象は発芽酵母やマウスで見られるDNA二重切断前の対合現象と相似性があり、今後相同組換えに必要なタンパク質と関連性からさらに詳しく解析する予定である。
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