研究課題
本研究は、近年の環境変化を化学量効果として捉え、「生産者の種多様性や消費者の栄養摂取に関する遺伝的多様性は、環境変化による生態系への化学量効果を緩和する」という仮説を検証することを目的としている。研究にあたっては、生産者として藻類を、消費者として循環単為生殖により繁殖する動物プランクトン、ミジンコ種を用いて行っている。前年度までの研究により、餌量や餌の化学量比の変化に対するミジンコの成長応答は種によって、また同じ種でもクローンによって異なること、成長に必要な餌の閾値密度も種間や種内で異なること明らかにされた。これら結果は、餌をめぐる種間での競争の優劣は同じ2種でも餌の化学量によって、また個体群の遺伝構造によって変化すること、したがって藻類など餌の化学量に影響を及ぼす環境変化は種間での競争関係を変化させることを示唆している。しかし、実際に2種間での競争の優劣が閾値餌密度から予想される結果と一致するかは不明であった。そこで、ミジンコ個体群を対象にした連続培養実験システムを構築し、閾値餌密度を明らかにしてきた3種のミジンコ、D.gaelata, D.tanakai及びD. pulicariaを用いて個体群の競争実証実験を行った。その結果、いずれの2種の組み合わせでも、閾値餌密度に優劣のある餌の化学量条件下では閾値餌密度の低い種が生物量の上で卓越するが、閾値餌密度では優劣がつきにくいと推定された化学量条件下では2種は長期間共存した。これら本研究の結果は、餌となる生産者の化学量の変化は消費者レベルでの種内・種間競争の優劣を変化させることを示しており、懸念される環境変化にともなう生態系への化学量効果は消費者の種間関係や種内の遺伝構造に変化を及ぼすことが判った。生産者の種多様性が消費者の化学量効果にどのような影響を及ぼすかについては、今後の課題として残された。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Ecosphere
巻: 3 ページ: art51
doi.org/10.1890/ES12-00098.1
Limnology
巻: 13 ページ: 261-267
DOI 10.1007/s10201-012-0380-x