研究課題
本年は、分析体制の確立を中心課題とした。まず、京都大学生態学研究センターに設置された安定同位体比質量分析計(GC/C/IRMS)を用いて、アミノ酸の窒素同位体比に関するオンライン測定法を確立し、土壌動物群集のアミノ酸同位体分析を行った。また、河川生態系のΔ^<14>C値を決める要因となる、河川の微細環境における礫上付着物(Epilithon)および粒状有機物(POM)のΔ^<14>C値を解析した。さらに、安定同位体比を測定するための有機物標準試料について、多くの国際標準物質と比較して値を決定した。続いて、京都大学にて準備されたグラファイト試料について、加速器質量分析(以下、AMS:国立環境研究所現有)による放射性炭素同位体の測定を実施した。測定に先立ち、AMSの高精度化、高感度化についての検討を実施した。高感度化のため、従来の加速電圧を4.6から4.8MVへの昇圧実験を行い、4.8MVでの定常運転が可能となった。また測定精度向上のため、ファラデーカップからの電流情報をイオン源へフィードバックさせ、グラファイト試料からのビーム引き出しを安定化させることに成功した。この結果、測定精度が大幅に向上した。陸上生態系構造、特に土壌分解系の時間軸を明らかにするため、北海道の冷温帯林、静岡の照葉樹林、沖縄の亜熱帯林から採集されたリター食ミミズ及び土壌食ミミズのΔ^<14>C値の測定を行った。^<14>C値から食物年齢(炭素が植物によって固定されミミズに利用されるまでの時間)を求めた結果、採集場所による有意な影響は見られず、リター食ミミズの食物年齢は約2年、土壌食ミミズの食物年齢は約10年であった。このことは、土壌動物が利用する炭素の循環速度が、冷温帯林から亜熱帯まで有意に違わないことを示唆している。
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Limnology
巻: 12(印刷中)
Biogeosciences Discussions
巻: 8 ページ: 2259-2280
PAGES news
巻: 18 ページ: 18-20