研究課題
平成23年度には、22年度に確立した放射性炭素14(14C)分析手法およびアミノ酸窒素同位体分析システム(GC/C/IRMS)を利用して、本格的な研究を進めた。陸域生態系研究としては、アミノ酸窒素同位体比分析を進めた結果、分解に伴う微生物の代謝によって従来からのアミノ酸栄養段階の計算とは異なる結果を生む可能性が示された。また、水域生態系研究としては琵琶湖集水域における河川生態系の炭素循環および食物網の研究を行った。生物群集の炭素・窒素安定同位体比を用いた食物網解析に加え、アミノ酸窒素同位体比を利用した栄養段階推定も開始した。その結果、河川生態系のように内部生産と外部生産の混合系では、アミノ酸窒素同位体比による栄養段階推定に注意を要することがわかった。また、森林より河川に流出する炭素画分(溶存無機炭素(DIC)・溶存有機炭素(DOC)・懸濁態有機炭素(POC))の放射性炭素14解析を開始した。その結果、流域の無機・有機炭素画分の14C値は母岩に影響されて大きく変動する部分と、母岩に関わらず集水域に影響されて変動する部分の混合によることがわかった。一方、水域生態系の窒素同位体比の変動要因として陸上生態系の消費者の現存量の影響を調べた。その結果、集水域中に大型草食上動物が多いほど、河川有機物の窒素同位体比が上昇することが明らかになった。また、森林生態系の遷移過程に伴う消費者群集の炭素窒素安定同位体の変動についての研究を行った。その結果、アリ群集の窒素同位体比が上昇する傾向があり、遷移が進むにつれて食物網構造に変化があることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
陸域生態解析および水域生態系解析の両方とも、試料採取および同位体比の精密分析を順調に進めている。3年間の研究計画上、2年目までの進行状況はおおむね計画通りといえる。
今後の研究計画としては、24年度が最終年度となるために、成果を取りまとめ学会発表とともに学術論文の出版を中心課題とする。そのためには、未分析の試料の分析をまず最優先課題とし、続いて関連する研究者と効率的な議論を行い、精緻な解析および緻密な議論構築をする必要がある。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (6件) 図書 (1件)
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