研究課題/領域番号 |
22370012
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
近藤 倫生 龍谷大学, 理工学部, 准教授 (30388160)
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研究分担者 |
丸山 敦 龍谷大学, 理工学部, 講師 (70368033)
山中 裕樹 龍谷大学, 理工学部, 実験助手 (60455227)
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キーワード | 食物網 / 複雑ネットワーク / 生物群集 / 琵琶湖 / 生物多様性 / 代謝 |
研究概要 |
本研究では、(1)不確かな情報をもとにして詳細な食物網構造とその動態への影響を評価する新しい手法を提案し、(2)それを利用 することで、詳細食物網解析に足る琵琶湖水系の魚類食物網構造とその特徴を明らかにし、(3)数理モデルを利用した動態解析を通じ て、生物種間相互作用ネットワークの視点から多種共存の機構を明らかにすることを目的としている。 本年度は、胃内容物試料解析結果をもとに、琵琶湖生態系における魚類を中心とした定性的食物網構造の推定を行った。また、魚類の 代謝速度測定を通じて、定量的食物網構築に利用する相互作用強度に関する基礎的情報を得た。さらに、漁業統計に基づく生物量推定 をおこなうことで、各生物種のバイオマスに関する基礎的情報も得た。 また、琵琶湖産魚類の窒素・炭素同位体比データから、MCMC法による食性解析を試み、各種が沿岸/沖帯食物連鎖にどの程度依存して いるかを推定した。この中には、既存の食性情報が極めて少ないビワマスなども含まれる。 種間相互作用の異質性や多様性が生物群集の動態に及ぼす影響に関する理論研究をおこなった。これをもとに、捕食-被食関係のみな らず、相利関係・競争関係をも取り入れた生物群集動態モデルを構築・解析し、種間相互作用の多様性が生物群集の安定性に寄与する こと、さらにこの安定化効果によって正の複雑性ー安定性関係が生じることを発見し、Science誌において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標であった琵琶湖食物網構造の決定と群集動態モデルの作成に必要な基本的な情報はほぼ集積し、数理モデルのひな形も完成している。これらのことより、研究はおおむね順調に進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、数理モデルの変数推定をより洗練された方法で行うことで、より現実的な数理モデルに修正していくことが必要である。特に、漁業統計に最尤推定を適用することで魚類バイオマスの推定を可能にする最近の研究成果を利用することで、魚類群集のバイオマス構造のより高度な推定が可能となり、数理モデルの信頼性を増すことができると考える。このような知見をもとに修正した数理モデルに、群集生態学的な解析を加えることで琵琶湖生態系の特徴のみならず、食物網の持つ構造的特徴を明らかにすることができるようになると考えている。
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