研究課題/領域番号 |
22370015
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉山 宗隆 東京大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (50202130)
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キーワード | 温度感受性突然変異体 / 細胸増殖能 / シロイヌナズナ / 脱分化 / ブロモデオキシウリジン / NAC転写因子 / rRNA / snRNA |
研究概要 |
シロイヌナズナの突然変異体srd2、rid1、rid2は、いずれも脱分化に伴う細胞増殖能の獲得に関し、強い温度感受性を示す。また、この増殖能の獲得は、チミジン類似体のブロモデオキシウリジン(BrdU)による選択的な阻害を受ける。そこで本研究では、srd2、rid1、rid2、rid2抑圧変異体sriw1、BrdU耐性変異体bro1などを用いて、脱分化過程で細胞増殖能が再獲得される機構について、解析を進めている。 SRD2とRID1はともにプレmRNAスプライシングに関わる因子をコードしており、これらの遺伝子の発現レベルがスプライシング能力を介して、増殖能を制限する一因となっていると考えられる。本年度は、胚軸脱分化過程での転写物の変動とそれに対するsrd2変異およびrid1変異の影響について、タイリングアレイによる網羅的解析を一通り完了し、どちらの変異の影響も受ける、共通の下流因子としていくつかの転写因子を見出したほか、rid1変異の影響下で特異的に現れる新しい転写ユニットを多数同定した。また、SRD2の発現に着目して解析を進め、プロモーター中の75bpの領域が基本的な発現制御に必要かつ十分であることを突き止めた上、この領域に作用するトランス因子を探索するための酵母1ハイブリッド系を準備した。 rid2についてはrRNA生合成に欠陥があること、sriw1変異のrid2抑圧能がNAC転写因子ANACO82の機能欠損に起因すること、rid2変異がANACO82の発現を上昇させることなどが、昨年度までの研究ですでにわかっている。ANACO82の転写物はよく保存されたuORFをもっており、uORFがANACO82の発現調節に関わっている可能性が考えられたので、一過的発現系を用いてuORFの改変の影響を調べたが、明確な結果は得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の計画では、ANACO82の発現制御とuORFとの関係を重要課題の一つとしていたが、一過的発現系を用いたために、これを明確にできなかった。また、BrdU耐性突然変異体を用いた解析も進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、rRNA生合成とプレmRNAスプライシングがどのように細胞増殖能を規定しているか、を解明することに焦点を絞っていく。一つの鍵はrid2変異によるrRNA生合成の低下がANACO82の発現を増大させる仕組みである。uORFの関与の有無を含め、(一過的発現系ではなく)安定的レポーター株を用いて検討を行う。SRD2の発現を調節するトランス因子は、RID1やRID2など増殖能獲得にはたらく遺伝子の発現調節に広く関わっている可能性があり、その特定を増殖能制御の上流を解明する糸口とする。BrdU耐性変異体の解析は、遅れているBRO1の同定を完了し、増殖能再獲得機構と関連づけることに集中したい。
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