研究概要 |
初年度である平成22年度は、まず目的達成のために必要な材料となる変異体の作成に特に重点をおいて研究を進めた。 1.葉と種子での脂質合成の振り分け機構に異常をもつ変異体の取得 (1)葉の貯蔵脂質合成を抑制する因子の単離(研究支援者、下嶋) 葉で貯蔵脂質を蓄積に異常をきたす変異体を取得するため、次世代シークエンサーを用いた発現解析により得られたデータをもとに、リン欠乏時に発現量が上昇する脂質生合成系の遺伝子の変異体の単離を進めた。 (2)種子の糖脂質合成を抑制する因子の単離(粟井、静岡大学生) 種子のプラスチドではチラコイド膜は発達しないので、その発現を抑制するメカニズムが存在すると考えられる。そこで、MGD1プロモーターにGFP遺伝子を連結したキメラ遺伝子の発現を指標に、MGD1の発現を抑制する因子の変異体のスクリーニング、単離を行った。 2.PAH1,PAH2の登熟種子での局在および機能解析(下嶋、東工大修士学生A) 貯蔵脂質合成におけるPAH1,PAH2の機能をより詳細に明らかにするため、登熟過程の種子を用いて、アイ.ソトープ(^<14>C)によるラベリング実験を行った。その結果、PAH1,PAH2は種子成熟時において重複した役割を持つと同時に、別々の役割を担っていることが示唆された。 3.未解明の貯蔵脂質合成経路の全容解明(太田、東工大修士学生B、C、粟井) 今回我々が見出したPAH1,2は、貯蔵脂質合成に関わる初めてのPAホスファターゼであり、TAG合成に必要なDAGの供給を担っていると考えられる。そこで、このような経路に関わる別の遺伝子であるNPC5,TGD1遺伝子の変異体との掛け合わせをおこない、3重変異体の単離を進めた。
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