研究課題/領域番号 |
22370018
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
深城 英弘 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80324979)
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キーワード | オーキシン / 核ー細胞質間輸送 / シロイヌナズナ / マイクロRNA / 遺伝子発現 / 側根形成 |
研究概要 |
オーキシンは植物の成長・発生にとって最も重要な植物ホルモンの一つである。植物のオーキシン応答は、オーキシンの生体内分布の調節と遺伝子発現制御に基づくことが示されているが、その全貌は明らかにされていない。これまでシロイヌナズナ側根欠失変異体slrのサプレッサー変異体suppressor of slr1 (ssl1)/hasty (hst)の研究により、側根形成開始におけるSLR/IAA14-ARF7/19を介したオーキシン応答にHASTY (HST)/exportin-5を介した核-細胞質間輸送系が機能することが遺伝学的に見出された。そこで本研究は、核-細胞質間輸送系を介したオーキシン応答の制御機構を明らかにすることを目的として、HSTの機能解析、HSTの標的と考えられる低分子RNA因子の同定、およびオーキシン応答における他の低分子RNA関連因子の解析などを行なう。昨年度までに、ssl1/hst変異によるslr変異体の側根欠失表現型の抑圧がARF7/19を介したオーキシン応答に依存することや、マイクロRNA合成に関わるDCL1, HYL1, SEの変異によってもslr変異体の側根欠失表現型が部分的に抑圧されることを示した。本年度は、slrおよびssl1/hst slr変異体を用いたマイクロアレイ解析と発現解析から、ssl1/hst変異によって発現量が変動するマイクロRNAのうちmiR319と、その標的遺伝子であるTCPファミリーのメンバーが、ssl1/hst変異によるslr変異体の側根欠失表現型の抑圧に関与する可能性が示唆された。また、別の核膜孔複合体因子AtTPRの変異によってもslr変異体の側根欠失表現型が部分的に抑圧されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、シロイヌナズナ側根欠失変異体slrのサプレッサー変異体suppressor of slr1 (ssl1)/hasty (hst)の研究から得られた「側根形成開始におけるSLR/IAA14-ARF7/19を介したオーキシン応答にHASTY (HST)/exportin-5を介した核-細胞質間輸送系が機能する」という遺伝学的関係について、HSTの機能解析、HSTの標的と考えられる低分子RNA因子の同定、およびオーキシン応答における他の低分子RNA関連因子の解析などを行なうことで、核-細胞質間輸送系を介したオーキシン応答の制御機構の解明を目指している。現在まで、DCL1, HYL1, SEおよびHSTを介して合成・蓄積されたマイクロRNAが、SLR/IAA14によるARF7/19の活性抑制に必要なことを示すとともに、HSTの標的と考えられる低分子RNA因子候補としてmiR319などを見出すことに成功した。また、HSTとは異なる核膜孔複合体因子AtTPRもSLR/IAA14によるARF7/19の活性抑制に関係することを見出した。当初計画にあるHST/exportin-5によって負に制御されるARF7, 19標的遺伝子の同定と解析については、用いるサンプルの作成に予定よりも時間がかかったため、次年度に繰越を行い対応した。全体としてはおおむね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
主な推進方策として以下の三つを行う予定である。 1.オーキシン応答におけるHST/exportin-5の標的因子の同定と解析: slr hst変異体におけるオーキシンを介した側根形成能の回復に関わるmiRNA(miR319)と標的遺伝子の候補(TCPファミリーメンバー)の発現・機能解析を行い、オーキシン応答におけるHST/exportin-5の標的遺伝子を同定する。 2.slr hst二重変異体においてオーキシン存在下でARF7, 19に依存して発現誘導される遺伝子をARF7/19機能誘導植物を用いた発現プロファイル解析によって直接的に同定し、それらの発現・機能解析を行う。またそれらと側根形成との関係についても調べる。 3.核膜孔複合体因子AtTPRやマイクロRNA生合成関連因子(DCL1, SE, HYL1)の変異が、slr変異体において側根形成能を回復させることが判明したことから、オーキシン応答におけるこれらの因子とHST/exportin-5との共通した標的因子を各二重変異体における発現解析により同定する。
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