研究課題/領域番号 |
22370027
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中村 正久 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (40130025)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | アンドロゲン / アンドロゲン受容体 / 性転換 / 性決定 / 免疫染色 / 性決定関連遺伝子 / トランスゲニックカエル / ツチガエル |
研究概要 |
脊椎動物の性は遺伝的、環境的、及び社会的要因で決まる。多くの脊椎動物の性は遺伝的、即ち受精時の性染色体の組み合わせで決まると考えられ、多くの研究者が性染色体上の性決定遺伝子の特定に多くの力を注いできた。しかし、現在までに発見されている性決定遺伝子は哺乳類や魚類のメダカなど数種でで見つかっているにすぎない。しかも性決定遺伝子は一つではなく、種で異なり多様と考えられるようになった。一方、環境的或は社会的要因による性決定では性決定遺伝子が関与しないと考えられる。また、魚類、両生類及び爬虫類の多くの種では、ステロイドホルモンによって性が転換する。性転換は性染色体の遺伝子が関与しない。つまり性決定の主役は性決定遺伝子だけではなくステロイドホルモンも主役になり得る。ツチガエルでは性染色体にAR遺伝子があり、W染色体のARは殆ど発現しない。従って、雌雄(ZZ/ZW)の発現比は2:1になる。この比はアンドロゲンが雄化に関わるため、雄にも雌にも有利である。本研究は、ステロイドホルモンが性決定因子と考え、(1)両生類(ツチガエル)の性(雄)がアンドロゲンとその受容体(AR)で決まることをトランスゲニックカエルの作製によって実証すること、(2)ステロイドホルモン合成酵素遺伝子の発現調節機構を明らかにすることにある。本年度の研究で、Z-ARをツチガエル受精卵に導入し変態時期まで育てた雌(ZW)カエルの生殖腺が部分的性転換を起すことを見いだした。部分的性転換は幼生の飼育水にテストステロンを加えると完全に性が転換する(投稿中)。この結果はアンドロゲンとその受容体がツチガエルの雄決定に深く関わっていることを示しており、一つの研究目的を達成することができたと言える。もう一つの目的に関してはステロイドホルモン合成酵素遺伝子の転写調節候補遺伝子を見出しており当初の目的は研究期間内に達成の見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、(1)両生類(ツチガエル)の性(雄)がアンドロゲンとその受容体(AR)で決まることをトランスゲニックカエルの作製によって実証すること、(2)ステロイドホルモン合成酵素遺伝子の発現調節機構を明らかにすることにある。本年度の研究によって、Z-ARをツチガエル受精卵に導入し変態時期まで育てた雌(ZW)カエルの生殖腺を解析すると20%を超える割合で部分的性転換を引き起こしていた。ARが性決定に関わっているという仮説を実証できたのである。また、部分的性転換は幼生の飼育水にテストステロンを加えて育てると雌(ZW)個体は完全な精巣を形成した(投稿中)。この結果はアンドロゲンとその受容体がツチガエルの雄決定に深く関わっていることを示しており、一つの研究目的を達成することができたといえる。もう一つの目的に関してはステロイドホルモン合成酵素遺伝子の転写調節候補遺伝子を見出しており(50%の達成率)、当初の目的は研究期間内に達成の見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、もう一つの目的、テロイドホルモン合成酵素遺伝子の転写調節候補遺伝子を見いだすことに関しては、雄化に深く関わるCYP17酵素遺伝子の転写調節候補遺伝子を見いだしており、現在、全長cDNAの単離を行なっている。全長cDNAの単離後はFISH法による遺伝子マッピング、プロモーターアッセイ、チップアッセイなどを行なう予定である。
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