研究課題
「研究目的」脊椎動物の性は(1)遺伝的要因、(2)環境的要因、或は(3)社会的要因のいずれかで決まる。爬虫類では(2)の卵の孵化温度、魚類では(3)の体の大きさで性が決まる種もある。またこれらの因子とは別に、脊椎動物の多くの種では、ステロイドホルモンによって性が転換する。本研究は、ステロイドホルモンによる両生類(ツチガエル)の性決定機構の解明を目的とする。特に、ツチガエルではアンドロゲンとその受容体(AR)が性決定に重要な役割を果たすことを示す。「研究成果」当研究室の研究によって、ツチガエルの性染色体にあるAR遺伝子は、Z染色体のAR(Z-AR)は正常に発現するが、W染色体の(W-AR)は退化していて殆ど発現しないため、雄(ZZ)と雌(ZW)胚のARの発現比が2:1になることを示した。このZ-ARの発現比は生殖腺の雄化(精巣形成)に有利である。そこで、Z-AR遺伝子をツチガエル受精卵に導入して発生させると雌(ZW)が性転換して精巣を形成すると考え、Z-AR遺伝子を導入したトランスゲニックツチガエルを作製した。Z-AR遺伝子を800個の受精卵に導入後、変態完了期まで飼育し、Z-AR遺伝子導入個体の生殖腺を分子及び細胞・組織レベルで解析した。その結果、Z-AR遺伝子を導入した9つの雌個体が不完全ではあるが性転換して卵精巣を形成した。卵精巣は内部形態から3つのタイプに分けられた。不完全性転換雌(ZW)幼生をテストステロン含有水で飼育すると変態後に雄(ZZ)の精巣と全く区別がつかない精巣(ZW)を形成した。「意義・重要性」Z-AR遺伝子導入カエルを作製し、アンドロゲンとその受容体(AR)が脊椎動物の性決定に関わることを世界で初めて示した。この研究成果は、性決定遺伝子とは独立した性決定のしくみを世界で初めて示したもので脊椎動物の性決定機構の解明に大きく役立つと思われる。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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