研究概要 |
適応放散的種分化とは1つの祖先種から複数の異なる生態的特性を持つ種に種分化する現象であり、昔から生物学者の興味を引き多くの研究が行われてきた。しかし、ほとんどは現象や遺伝的特性、系統関係などの記述的研究で、進化メカニズムまで踏み込んだ研究はほとんどない。本研究では最近急速に発展してきた遺伝子/ゲノム解析技術を用いて、実際に適応放散を引き起こした遺伝的変化の特定、自然選択あるいは遺伝的浮動の役割の解析をゲノム全体で行い、適応放散的種分化が生じる進化メカニズムの総合的解明を試みる。そのため、すでに系統関係や各種内の遺伝的変異などの研究が進んでいる小筆原諸島の固有種3種を含むアゼトウナ属(キク科)を対象にしている。 平成22年度は、小笠原固有種のヘラナレン、コヘナラレンおよび、アゼトウナ属の小笠原固有種の姉妹群にあたるアゼトウナについて、花のつぼみから全RNAを抽出し、mRNA分離後、cDNAライブラリーを作成し、次世代シークエンサーにより、配列決定を行った。また、ヘラナレンについては葉からの抽出RNAからの解析も行った。それぞれについて塩基を読んだ結果、ヘラナレン、コヘナラレン、アゼトウナについて、それぞれ約3600万、4200万、5400万の100bpのリードができ、アライメントの結果、14,532、15,325、16,687の配列が得られた。また、ヘラナレンの葉については、約2530万のリードで、12,423の配列を得た。それぞれの配列について、BLASTプログラムを用いて既知配列との相同性を検索し、それぞれの種についてそれらをデータベース化した。詳細な比較解析は23年度で行う予定である。
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