研究課題/領域番号 |
22370034
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
川井 浩史 神戸大学, 自然科学系先端融合研究環・内海域環境教育研究センター, 教授 (30161269)
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研究分担者 |
山岸 隆博 神戸大学, 自然科学系先端融合研究環・重点研究部, 助教 (30379333)
甲斐 厚 神戸大学, 自然科学系先端融合研究環・内海域環境教育研究センター, 学術推進研究員 (60527802)
長里 千香子 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター室蘭臨海実験所, 准教授 (00374710)
奥田 一雄 高知大学, 教育研究部・総合化学系・黒潮圏総合科学部門, 教授 (40152417)
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キーワード | ストラメノパイル / 多細胞化 / 分子系統 / 細胞壁 / 多糖類 / ゲノム解析 / 微細構造 / 褐藻類 |
研究概要 |
ストラメノパイル系統群(不等毛藻類)の中で褐藻類だけが大型で複雑な多細胞体制の藻体を進化させ、藻場を作るなど沿岸生態系の最も重要な構成要素となったが、分子系統学的解析において褐藻類と近縁であることが示唆される系統群の中には単純ではあるが多細胞体制を作るものも含まれる。そこで本研究では、褐藻類とその姉妹群の系統関係をより詳細に明らかにするとともに、褐藻類の多細胞進化に重要な役割を果たしたと考えられる、細胞分裂・細胞壁形成・細胞間連絡などに関わる細胞構造の微細構造解析と、それに関わる遺伝子の解析を行った。 本年度は昨年度に引き続き褐藻類とその近縁系統群を対象に18SrDNA, ebcL, psaA, psbA, psbC, atpB,遺伝子の塩基配列情報を用いた多遺伝子系統解析を行った。その結果、褐藻綱+シゾクラディア藻綱、クリソメリス藻綱+黄緑藻綱+ファエオタムニオン藻綱+アウレアレナ藻綱の2系統群の姉妹群関係を示唆する結果が得られ、統計的な信頼度を改善するための解析を進めている。また、褐藻類の進化の過程でもっとも初期に分岐し、また単純な組織構造を示すディスコスポランギウム目のDiscoporangium mesrthrocarpumの大量培養を行い、そのEST解析を行った.これに昨年度得たシゾクラディア藻のゲノム情報を加えて、褐藻類とシゾクラディア藻における細胞的多糖合成に関わる遺伝子構成とその進化について考察を行った。また、フコイダンの新奇抗体を作成し、蛍光抗体法、電子顕微鏡観察による褐藻及びシゾクラディア藻ほかの細胞分裂過程の詳細な検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多遺伝子解析による褐藻とその姉妹群の系統解析については、ほぼ順調に解析がすすんでいる。また褐藻類の姉妹群であるシゾクラディア藻と、褐藻類で最も祖先的なディスコスポランギウムのETS情報が得られたことで褐藻類の多細胞化に関わる機能的な要素として重要な、細胞壁形成に関わる多糖類の生合成系の違いを遺伝子レベルで比較できた。また、細胞分裂における微細構造の違いも解析が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
褐藻類とその姉妹群の分子系統解析をさらに進め、より信頼度の高い分子系統樹を構築する。また、これらの系統群のEST情報に基づき、細胞壁多糖生合成系の進化について検討を進める。これらの結果と、細胞分裂過程の微細構造解析結果を比較検討し、褐藻類における多細胞化の鍵となった要素について考察する。
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