研究課題
ストラメノパイル系統群の中で褐藻類だけが大型で複雑な多細胞体制の藻体を進化させたが、分子系統学的解析において褐藻類と近縁であることが示唆される系統群の中には単純ではあるが多細胞体制を作るものも含まれる。そこで本研究では、褐藻類とその姉妹群の系統関係をより詳細に明らかにするとともに、褐藻類の多細胞進化に重要な役割を果たしたと考えられる、細胞分裂・細胞壁形成・細胞間連絡などに関わる細胞構造の微細構造解析と、それに関わる遺伝子の解析を行った。本年度は昨年度に引き続き褐藻類とその近縁系統群を対象に18S rDNA, rbcL, psaA, psbA, psbC, atpB遺伝子の塩基配列情報を用いた多遺伝子系統解析を行った。また褐藻類の姉妹群で多細胞体制を作る黄緑色藻のファエオタムニオンの大量培養を行い、その網羅的cDNA解析を行った。これに昨年度までに得たシゾクラディア、ディスコスポランギウムおよびシオミドロのゲノム情報を加えて、細胞的多糖合成に関わる遺伝子組成について考察を行った。その結果、フコイダン生合成系に関与する酵素はディスコスポランギウムではシオミドロより総数は少ないが、代謝経路を完結できると考えられるのに対して、シゾクラディア、ファエオタムニオンではゲノム情報から推定される既知の酵素のみでは代謝経路を完結できないと予想された。しかしフコイダンの新奇抗体を作成し、蛍光抗体法、電子顕微鏡観察による褐藻、シゾクラディア藻、黄緑色藻の細胞壁における局在を調べた結果、これらの何れの系統群でもフコイダンの存在を示す結果が得られた。このため、既知の酵素とは塩基配列が大きく異なる酵素系を持っている可能性が示唆された。また褐藻内では祖先的な種であるディスコスポランギウムでは、ツルモなどのより派生的な種と比べるとフコイダンが量的に少ないことが示唆された。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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