研究概要 |
本研究は,これまで系統学的な取り扱いが困難であった巨大クレードの進化史解明の新たな方法論をコイ目魚類(必要なデータは収集済み)で確立し,それを進化的起源(海水vs.淡水)も生物学的特性(分布・生態)も大きく異なる二つの巨大クレード(ハゼ亜目魚類とカワスズメ科魚類)に対して実際に適用するものである.この方法論の土台となるのが,申請者が考案したミトゲノム超行列と呼ばれるもので,自ら決定する数百のミトゲノム全長配列に,さまざまな遺伝子から得られた数千の部分配列(データベースからダウンロード)を整列させた混合行列である.平成23年度には,コイ目魚類の469種のミトゲノム全長配列に基づき高次系統関係の大枠を推定した結果をもとに,データベースからダウンロードした2171件の部分配列を新たに加えた混合行列を作成し,大規模な超行列解析を行い,その成果を二つの国際学会で発表した.また,ハゼ亜目魚類ではミトゲノム全長配列173種が決定され,予備的解析を行った結果,全体的には超行列解析に十分な頑健なトポロジーが得られたが,部分的に不安定な箇所があったため,さらに分類群のサンプリングを行う必要があることが明らかになった.残り数種を追加することにより,より良好な結果が得られると考える.カワスズメ科魚類に関しては,主要がクレードのサンプルを集めることができたが,アフリカ産のものがいくつか不足しており,それらを追加することが今後の課題となることが判明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標としていたミトゲノム全長配列数については,コイ目についてはほぼすべて決定し,ハゼ目については残り数種のみ,またシクリッドについては多少不足しているものの,来年度にはほぼ充足するものと思われる.すでに学会発表にて解析結果を公表しており,来年度には論文執筆に取りかかれる予定である.
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