脊椎動物の自然免疫応答は、感染源である病原体(細菌、ウィルスなど)が、細胞膜上のToll様受容体(以下TLR : Toll-Like Receptor)によって認識されることによって始まる。これまでの研究から、自然免疫応答は、TLR→リン酸化カスケード→NF-κB→炎症反応という情報伝達により引き起こされる。本研究では、この情報の流れを担う「実行分子群」が「相互作用」を通して、どのように上流から情報を受け取り、また下流へと伝達するのかを解明することを目標とする。本研究の主要なテーマに、TLR関連のアダプター蛋白質分子群の解析がある。本年度は、アダプター分子MyD88とTRAM(TRIF-related adaptormolecule)との相互作用について解析を行なった。何れのアダプター分子もTIRドメインを有する。TIRドメインはヘテロダイマー・オリゴマーを形成する性質があるが、MyD88とTRAMのTIRドメイン同士の相互作用は、これまで調べられていなかった。我々は、GSTプルダウン法を用いて、精製タンパク質レベルでMyD88-TIRとTRAM-TIRの間に直接相互作用があることを見いだした。さらに、点変異実験から、MyD88-TIRの、TIRAPと相互作用する領域を特定した。細胞を使ったレポーターアッセイの系を構築し、実験を行なったところ、IL-18に対する細胞応答にMyD88-TRAMの相互作用が関与することが示唆された。IL-18シグナルは細胞内においてTLRと同様にMyD88を介したシグナル伝達経路を経由する。これまでの知見では、TRAMはMyD88非依存的なTLR4シグナル伝達経路において、TRIF(TIRdomain-containing adaptor inducing IFN-β)と相互作用するとされている。本研究の成果より、TRAMがIL-18シグナルにも関与することがわかった。
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