研究課題
自然免疫応答は、TLR→リン酸化カスケード→NF-κB→炎症反応という情報伝達により引き起こされる。本研究では、この情報の流れを担う「実行分子群」が「相互作用」を通して、どのように上流から情報を受け取り、また下流へと伝達するのかを解明することを目標とする。本年度は、TLRシグナルと細胞内アダプター蛋白質分子群を共有するIL-18シグナルの構造生物学的解析を行った。IL-18受容体はIL-1受容体の類縁体であり、イムノグロブリン様の細胞外ドメインと細胞内のTIRドメインを有する。このTIRドメインは、TLRシグナルにも含まれるMyD88と相互作用し、下流にシグナルを伝えることが知られている。さらに、その下流の経路は、TLRシグナルと同一であることから、IL-18シグナルの解析によりTLRシグナルの理解も深まると考えられる。NMRによる相互作用解析IL-18とIL-18受容体αの細胞外ドメイン(IL-18α)、およびIL-18受容体β細胞外ドメイン(IL-18β)の相互作用解析を行った。[2H,15N]-IL-18を調製し、ここにIL-18αを滴定しNMR測定を行い相互作用面を同定した。さらに、TROSYタイプの三重共鳴NMR測定を行い、IL-18部分の主鎖原子核の化学シフト帰属を行った。続いて、交差飽和法により複合体中の接触面を正確に決定した。次に、この2者複合体にIL-18βを滴定した。以上の実験から、IL-18上のIL-18α及びIL-18βとの相互作用面を同定した。2者複合体の分子量は6万、3者では10万となるが、TROSY法を利用することにより高感度に測定を行うことができた。以上の相互作用データから、IL-18とIL-18受容体の相互作用モードは、IL-1と受容体のそれと極めて類似していることが明らかになった。IL-18-IL-18Rα-IL-18Rβ三者複合体の結晶構造解析さらに詳細な分子認識機構の解明のため、上記三者複合体の結晶化を進め、結晶を得ることができた。回折データを取得したが、IL-1複合体を用いた分子置換法では構造決定に至らなかった。そこで、MAD法を行うべく、IL-18のセレノメチオニン標識体を作成し、結晶化を進めている。
2: おおむね順調に進展している
TIRドメインの複合体の構造解析は、当初予定よりも遅れているが、IL-18関連の研究が、当初計画以上に進んでいるため。
TIRドメイン複合体の構造解析に注力する。基本的に、TIR間の相互作用は、それほど強くなく、ヘテロ二量体の形成は、細胞外ドメインが二量体を形成することにより誘起される。そこで、強制的にTIRヘテロ二量体を組ませるようなコンストラクトを作成し、NMRを用いて相互作用を確認し、結晶化に進む。
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