研究課題
本研究は、大腸菌の外膜に存在するBAM(beta-Barrel Assembly Machine)複合体と呼ばれる装置が、どのようにして他のタンパク質を外膜に挿入したり、外膜の外側へと分泌させているかについての具体的なメカニズムを、構造生物学の手法を用いて理解することが目的である。この輸送メカニズムはまだ解明されていないので、我々はBAMの構造と基質の相互作用を研究している。BAM複合体の具体的なタンパク質輸送メカニズムが解明されれば、新しい薬剤開発ターゲットとなりうる。他の研究室の結果によると、BAMは五つの成分を含む:BamA、YfiO、YfgL、NlpB、SmpA。我々はこの遺伝子をクローン化して、タンパク質を発現させた。各成分タンパク質を精製して、複合体の結晶化を目指し、まず最初に成分同士の相互作用を物理的手法で調べた。BamAは大きい膜貫通タンパクだが、N末端領域のPOTRAドメインしかBAMのタンパク質に結合しないと報告された。それで、我々はPOTRA領域を発現し、他のBAM成分に結合するかどうかを調べた。結果、分析超遠心機でPOTRA、YfgLとSmpAは他のタンパク質に結合しない。Electrospray mass spectrometryでも同じ結果だった。一方、NlpBとYfiOはお互いに結合する。等温滴定熱量計を使って、相互作用の親和性を測った。親和性は高くないので、この複合体もかなり結晶化しにくいと考えられる。今後はこの複合体をいかに安定化させて、結晶化するかの具体的な検討に入る。
2: おおむね順調に進展している
難しいと考えられていたタンパク質の調製に成功し、物理化学的実験が進行中である。
タンパク質複合体の結晶構造解析を目指して、NlpBとYfiOの発現系の最適化を行う。具体的には発現タンパク質の長さを調節する、融合タンパク質として共発現する、等の工夫を施す。
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