研究概要 |
ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)には10種のアイソザイムが存在する.それらの生理機能はこれまで殆ど不明だったが,最近申請者らは,DGKのα(腫瘍壊死因子α~NF-κB),δ(グルコース~インスリン受容体),η(上皮増殖因子受容体~Raf~MEK~ERK)アイソザイムが,それぞれ重要なホルモン・サイトカイン受容体シグナル伝達系を決定的に制御し,難治病態形成において重要な役割を担う可能性を示した,そこで更に進んで,これらを含むDGKアイソザイムが制御するシグナル伝達機構の詳細と個体レベルでの病態生理機能を明らかにすることを計画した.この内,DGKα,γ,δとηの動態に関して以下の興味ある知見が得られた. 1.DGKαはRas-Raf-MEK-ERK経路の活性化によりヒト肝細胞がんの進行を促進する 2.c-AblチロシンキナーゼはTyr-218のリン酸化によってDGKαの血清誘導性の核から細胞質への移行を制御している 3.Ca_2+結合に伴いDGKαのEFハンドモチーフの構造が変化し,それによってC末側領域との分子内相互作用が弱まる 4.神経細胞においてDGKYの細胞膜局在と糸状仮足様突起形成には相関関係が認められる 5.グルコース刺激によってDGKδはプレクストリンホモロジーとClドメインを介して細胞膜へ一過性に移行する 6.DGKηは高浸透圧刺激に応じて脂質ラフトとは異なる界面活性剤不溶性膜画分へ移行する
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