研究概要 |
我々はBalb3T3細胞の密度依存的な増殖阻害が細胞外へ分泌されたガレクチン-3が細胞膜糖タンパク質VCAM-1の糖鎖と結合することで起こることを見出し、本研究はその分子機構を解明することにあった。まずSNAP標識のガレクチン-3を用い、ガレクチン-3は細胞密度が50%前後になると細胞外へ分泌されること、この分泌はCaイオノフォアで促進されること、さらに細胞密度が50%前後になると細胞内Ca濃度が増すこと、ガレクチン-3はエクソソームのマーカーRab4と共局在することを見出した。以上の結果から、Balb3T3細胞は細胞密度が50%前後になると細胞内Ca濃度が増大し、増大したCaはエクソソーム形成とその分泌を促進し、ガレクチン-3は細胞内から細胞外へ移動すると考えられた。 VCAM-1は細胞質領域にリン酸化部位がなく、アダプター分子と相互作用をすることでシグナル伝達を制御していると考えられた。アダプター分子の候補としてEzrin, Radixin, Moesin (ERMタンパク質)を考え、ガレクチン-3が細胞外へ分泌される密度50%の細胞を固定し、抗VCAM-1抗体で染色し、次に膜透過処理を行い抗Ezrin抗体や抗Moesin抗体と反応させ、二重染色を行った。その結果、各抗体による蛍光の半分以上は共局在し、EzrinやMoesinは一部のVCAM-1の細胞質領域とも結合している可能性が示された。これを確立するために、免疫沈降法による解析等が必要である。 VCAM-1が癌化で消失したSV-T2細胞にVCAM-1遺伝子を導入発現させると、MAPK経路やmTOR, p70S6K, STAT3のリン酸化の抑制が起こり、足場非依存的な細胞増殖が抑制された。このことからVCAM-1の発現自身にも細胞の増殖を調節する機能があると考えられ、今後の課題となった。
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