研究課題/領域番号 |
22370050
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
横田 崇 金沢大学, 医学系, 教授 (50134622)
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研究分担者 |
小出 寛 金沢大学, 医学系, 准教授 (70260536)
赤木 紀之 金沢大学, 医学系, 助教 (70532183)
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キーワード | 幹細胞 / 自己複製 / エピジェネティクス / 細胞周期 / クロマチンリモデリング |
研究概要 |
胚性幹細胞(ES細胞)の自己複製制御機構を解明する目的で、「エピジェネティクス制御機構の解析」、「クロマチン・リモデリング複合体の解析」及び「細胞周期制御機構の解析」の3つのテーマを遂行した。 STAT3の下流で機能するエピジェネティクス制御因子であるEedの解析は、予想以上に早く研究が進展したため、本年度は、STAT3やその下流の因子群で形成される転写因子ネットワークの解析を進めた。STAT3とOct3/4の下流因子であり、核内ホルモン受容体に属する因子であるDax1と相互作用する因子を、酵母twohybridスクリーニングをした。その結果、転写因子Esrrbを同定し、Dax1、EsrrbおよびOct3/4の三者がES細胞でregulatory networkを形成していることを見出した。 一方、「クロマチン・リモデリング複合体の解析」では、複合体の構成因子であるBaf53aに着目している。Baf53aはOct3/4と結合する可能性を見出していたことから、両者の相互作用領域を決定した。その結果、Baf53aはOct3/4のPOUドメインに、Oct3/4はN末端側やC末端側問わずBaf53aのあらゆる領域に結合しうることを見出した。さらに、遺伝子破壊実験を試みており、Baf53a遺伝子の片アリルの破壊は完了し、テトラサイクリン発現誘導型Baf53a+/-ES細胞を樹立した。 さらに「細胞周期制御機構の解析」では、CyclinE1の遺伝子発現制御機構の解明に取り組んだ。CyclinE1遺伝子のプロモーター領域にはE2F結合配列が存在し、実際にE2F1がこの領域に作用し発現制御に関わっていることを明らかにした。さらにこのE2F1は、転写因子LRH1によって発現制御されていることを突き止め、ES細胞におけるLIR1→E2F1多→Cyclin E1の経路があることが判明した。またGO期からS期の再入に関与する転写因子GABPalphaにおいて、Cre-LoxPシステムを用いた遺伝子破壊ES細胞を樹立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「エピジェネティクス制御機構の解析」、「クロマチン・リモデリング複合体の解析」及び「細胞周期制御機構の解析」の3テーマからは、それぞれ新しい知見が見出されており、今後も継続的に解析を続けることで大きく発展が見込まれることから、現段階でおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
Baf53a遺伝子に関しては、片アリルの遺伝子破壊が成功しているので、今後両アリルを破壊し、自己複製への影響を解析する。またGABPalpha遺伝子に関しては、遺伝子破壊時におけるES細胞の表現型は観察されたものの、その詳細な分子メカニズムの解明には至っていない。今後、その分子メカニズムを明らかにする予定である。ES細胞におけるLRH1→E2Fl→CyclinE1の経路は、分子生物学的手法(Luciferase assayやChIP assayなど)を利用し、分子経路の詳細を解明する予定である。
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