研究概要 |
FLASH/casap8ap2は、ヒストンmRNAのプロセッシングを担う複合体と核内で会合し、細胞のS期進行に必須の活性を有することが示されている。また、FLASHはCoREST複合体と会合し、多様な遺伝子の転写調節に関与することを我々は示している。 今年度は、FLASHの発生や文化に対する影響解析等を行い、下記の結果を得た。がん化した培養細胞株でFLASHの発現を抑制するとS期進行が止まり、細胞は増殖できなくなるが、ヒト二倍体線維芽細胞株では細胞増殖に影響をあたえないという結果を得た。また、FLASHのノックアウト(KO)マウスが個体発生の初期で胎生致死となることが報告され(Oncogene, 31:573-382, 2012)、我々もFLASHのプロモーター領域に変異を導入したマウスで同様の結果を得た。一方、FLASHのKO ES細胞株を作製したところ、ES細胞は正常に生育するという驚くべき結果を得た。またFLASH KO ES細胞から、in vitroで神経や心筋細胞への分化を誘導したところ、正常に神経や心筋細胞を調製することができた。FLASHはがん化した細胞株では増殖に必須であるが、ES細胞は正常に分化した細胞では増殖には必須ではないことが示唆された。これらの結果は、FLASHはがん化した細胞では細胞増殖のS期進行に必須の機能を有するが、正常細胞では必須でないことが示唆され、がん細胞特異的な性質を記載していると考えられ、興味深い。
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