研究課題
脊椎動物ゲノムのCpG配列中のシトシン塩基は、しばしばメチル化修飾を受けている。シトシン塩基のメチル化は、遺伝情報発現に抑制的に働く“エピジェネティック”要因の一つであり、DNAのメチル化による遺伝情報制御は発生・分化に欠くことができない重要な役割を果たしている。メチル化模様は複製の過程で次世代の細胞に正確に伝えられる。この世代を超えたメチル化模様の伝達にはDnmt1と呼ばれるDNAメチル化酵素の一つが責任酵素として働いている。本研究計画では、Dnmt1について、へミメチル化(片鎖だけがメチル化された)DNAを認識する機構と、生体内でメチル化模様の維持に必須な因子であるNp95(別名Uhrf1)との共役について明らかにすることを目指す。これまでにDnmt1のN末端290アミノ酸残基を欠く大きな断片のX線結晶構造を解くことに成功している。得られた立体構造から、Dnmt1を複製フォークにガイドするN末領域(TS)が、ヘミメチル化DNAが結合する触媒ポケットに嵌まり込んでいて、そのままでは基質DNAが触媒中心にアクセスできない配置となっていることが明らかにした。活性を発現するためにはこのTS領域を触媒ポケットから排除する必要がある。TS領域は触媒領域と4本の水素結合で繋がれていた。本研究で、TS領域がDnmt1によるヘミメチル化DNA結合の際に排除される機構と、その過程でNp95/Uhrf1からどのようにヘミメチル化DNAが受け渡されるのかについて、その分子機構の一端を明らかにすることに成功した。また、従来維持メチル化に必要とされたPCNAとの相互作用は、細胞内での解析により不要であり、TSだけが維持メチル化にとって必須な領域であることを明らかにした。また、TSは異常なメチル化からゲノムを守る機能をもつことを明らかにした。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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