アクチン線維の細胞内(特に核膜周囲)の空間構造を明らかにするため、クライオ電顕法、フリーズエッチング法、水中原子間力顕微鏡法など多様な方法を用いた。 アクチン線維は細胞内においてストレス線維を形成することは知られているが、ストレス線維を形成しないときも数本の束を形成することが多い。そして、免疫細胞化学的にはこれらの線維に沿って多くのミオシンIIが存在する。しかし、その構造は特定できないので、ミオシンは形成されないか、きわめて断片的な線維形成に留まっていると考えられる。一方、光学顕微鏡によるlive cell imagingで解析できなかったが、多くのアクチン線維やストレス線維が核膜表面に達していることが明確になった。また核膜表面は中間径線維(ビメンチン)で覆われており、核膜表面近傍ではアクチン線維に伴行するためアクチン線維の停止位置は確認できなかった。しかし、アクチン線維は核膜孔近傍より伸び出していると考えられる。また、アクチンの方向性は核膜に向かうものと、核膜からで行くものが認められた。一方、ビメンチンは核膜孔形成タンパク質から伸びていると考えられる。核膜にはアクチン結合能を有する膜タンパク質であるネスプリン1が多量に存在することも明らかにした。
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