研究課題/領域番号 |
22370059
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
井出 徹 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (60231148)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | イオンチャネル / 1分子計測 / 単一チャネル電流 / 人工膜 / 蛍光 |
研究概要 |
イオンチャネルタンパクの活性発現に伴う構造変化を解明するために、単一チャネルの電気・光学的同時計測システムを開発し、賦活剤、あるいは阻害剤のタンパクへの結合解離、構造変化と機能変化を1分子レベルで電気的・光学的に同時計測することを目指している。 上記装置の開発の一環として、これまでにAFM探針を用いたチャネルタンパクの人工膜への組み込み法を開発しているが、測定をさらに簡便かつ高効率に行うために、チャネルタンパクを表面に固定したガラス微小針、あるいは金属電極を用いて人工膜を瞬時に作製し、同時にチャネルタンパクをその膜に組み込む方法を開発した。前者では、先端を鋭利に加工したガラスファイバーにチャネルタンパクをHis-tag、あるいはAvi-tagを介して固定し、力学的に人工膜に組み込む。ファイバーを通して照明することにより、先端の蛍光を観測可能である。後者では、電解研磨した金電極に同様に固定したチャネルを用いて計測を行った。金電極を用いた方法は、副次的産物としてチャネルを用いたハイスループットセンサーの作製に応用可能である。何れの方法も、事前に人工脂質二重層膜の形成が不要であることから、前年度までに報告した方法と比較して、一層の高効率化に成功しており、100%の確率でチャネルを膜に再構成することができる上、人工膜を形成するのと同時にチャネル電流を測定することができた。 また、前年度までにカリウムチャネルの一つであるKcsAチャネルのpHセンサー部位を特定するために、細胞内領域の酸性アミノ酸を中性に替える変異を行い、数個の酸性アミノ酸がpHセンシングに大きくかかわっていることを明らかにした。今年度は、これらのうち機能制御に重要であるアミノ酸をさらに絞り込むために点変異体を多数作製し、上記装置を用いて機能解析を行った。その結果、タンパクのC末端に近い位置にある酸性アミノ酸が機能制御の鍵となることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね計画通り進行している。計測装置は申請時の計画から大きく改良された。申請時の計画では、エバネッセント照明を用いて人工膜中の蛍光分子を観察することになっていたが、新たなタンパクの再構成法を開発したことによって、より効率よく1分子を観測可能となっている。 KcsA以外のチャネル(MthK,Kv)の計測については、前年度までやや遅れが見られたが、上記装置(手法)の改良によって計測が可能となった。計画の推進に伴い副次的な成果(申請書に明記していない光感受性チャネルの作製や装置のセンサーデバイス作製への応用など)も得られている。
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今後の研究の推進方策 |
概ね申請書通りの計画を推進する。本年度開発した1分子操作法と1分子イメージング技術を組み合わせて、単一チャネルの電気・光学同時計測を行う。まず、KcsA、MthK、Kvチャネルを中心に解析を進める。 具体的には今年度に引き続き、 1.光ファイバーの微細加工:次項の再構成を効率よく行うため、ファイバーの形状、表面状態などを検討する。 2.再構成法の改良:光ファイバーに固定した可溶化チャネルタンパクを人工膜に再構成する方法の効率化。再構成の高効率化を図るために固定法、計測条件等を検討する。 3.蛍光標識したKチャネルを人工膜に組み込み、1分子チャネルの電気・光学同時計測を行う。チャネル阻害剤とチャネルの相互作用を1分子同時計測する。
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