研究概要 |
本研究では,最近新たに見つかった酸素耐性NAD^+還元4量体ヒドロゲナーゼや,膜結合性シトクロムb含有6量体ヒドロゲナーゼの高分解能X線結晶解析を行うとともに,従来型酵素で未だ得られていない2つの「活性型(Ni-SIa型とNi-R型)」の構造を明らかにし,Niの関わる生体内水素活性化触媒反応機構(プロトン・ヒドリド・電子の生成)の全容を理解することを目的とした.その結果,平成22年度は,水素酸化菌Hydrogenophilus themoluteolus TH-1(HtTH-1)の培養法と本菌体由来の新規のNAD^+還元型[NiFe]ヒドロゲナーゼの精製法を確立した.培養では,一般的な栄養培地である,2x-Yeast-Trypton(2x-YT)培地を用いた20L規模の従属栄養的培養で500gの菌体を得ることに成功した.得られた菌体のNAD^+還元活性を測定したところ,従来の独立栄養的な培養から得られた菌体の酵素活性とほぼ同程度であった.次に,好気的条件下での効率的な精製法の確立を目指した.まず,培養菌体破砕上清に活性画分を得た後,溶液のpHを変化さないように硫安分画することで多くの夾雑タンパク質を除去し,かつ高活性画分を得ることに成功した.その後,陰イオン交換クロマトグラフィー(2回)とゲル濾過クロマトグラフィーを行うことで,SDSおよびNative電気泳動で,4本および単一のバンドを示す最終精製標品を得た.SDS電気泳動で得られた4本のバンド試料のN末端部分のアミノ酸配列分析で,本試料がHtTH-1由来のNAD^+還元型[NiFe]ヒドロゲナーゼであることを確認した。 膜結合性シトクロムb含有6量体ヒドロゲナーゼについては,結晶化に成功した.
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