研究概要 |
大腸菌の複製開始複合体は、複製起点oriC上で形成されるATP型DnaA-DiaA多量体である。この複合体にDnaBヘリカーゼ(ホモ6量体)が適時的に装着される。複製開始反応後、DNAポリメラーゼIIIのクランプ因子を含む複合体により、DnaA-ATP加水分解が活性化される(RIDA)。これにより不活性なADP-DnaAが産生し、過剰開始が抑制される。次サイクルの複製開始前には、特異的なゲノムDNA部位(DARS)を含む複合体により、ヌクレオチド交換反応が進められADP-DnaAがATP-DnaAに変換し再活性化する。本計画では、これまでの基盤にもとづき、分子生物学的、生化学的、合成生物学的、構造生物学的解析を進め、複製開始複合体やDnaA活性の制御装置という動的高次複合体の作動機構と制御機構を解明することを目的とする。そのため、3年間の計画に沿って研究を進め、その初年度である本年度は以下のような進展や成果が得られた。 (1)複製開始複合体の分子解剖による開始機構解析 多様なDnaA box変異を含むoriC変異体やDnaA変異体を設計、作成して、機能解析と複合体構造解析を進めた。最小oriC複合体の結晶解析のため複合体の分離条件を見いだした。 (2)DnaBヘリカーゼ装着に関わる主要機構 変異DnaB, DnaA蛋白質を新たに多数作成し精製標品を得た。またDnaBヘリカーゼ機能の試験管内アッセイ系も新たに作成した。 (3)RIDAにおけるHda機能制御機構とクランプ-Hda-DnaA複合体における主要相互作用機構 変異クランプ蛋白質を新たに多数作成し精製標品を得た。 (4)ADP-DnaAをATP-DnaAに変換する「DARS」の主要機能メカニズム 新たに見いだしたDARS制御蛋白質の変異などを用いDARS機能への影響を見いだした。
|