研究課題/領域番号 |
22370064
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
片山 勉 九州大学, 大学院・薬学研究院, 教授 (70264059)
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研究分担者 |
植田 正 九州大学, 大学院・薬学研究院, 教授 (90184928)
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キーワード | DnaA / DnaB / oriC / ATP / 細胞周期制御 / 染色体複製開始制御 / タンパク質高次複合体 / 試験管内再構成 |
研究概要 |
.大腸菌の複製開始複合体は、複製起点oriC上で形成されるATP型DnaA-DiaA多量体である。この複合体にDnaBヘリカーゼ(ホモ6量体)が適時的に装着される。複製開始反応後、DNAポリメラーゼIIIのクランプ因子を含む複合体により、DnaA-ATP加水分解が活性化される(RIDA)。これにより不活性なADP-DnaAが産生し、過剰開始が抑制される。次サイクルの複製開始前には、特異的なゲノムDNA部位(DARS)を含む複合体により、ヌクレオチド交換反応が進められADP-DnaAがATP-DnaAに変換し再活性化する。本計画では、これまでの基盤にもとづき、分子生物学的、生化学的、合成生物学的、構造生物学的解析を進め、複製開始複合体やDnaA活性の制御装置という動的高次複合体の作動機構と制御機構を解明することを目的とする。第2年度である本年度は以下のような進展や成果が得られた。 (1)複製開始複合体の分子解剖による開始機構解析 多様なDnaA box変異を含むoriC変異体やDnaA変異体を用いて、機能解析と複合体構造解析を進め、独自の研究成果を得て、画期的な新規モデルを提案した。 (2)DnaBヘリカーゼ装着に関わる主要機構 変異DnaB, DnaA蛋白質を新たに多数作成し精製標品を、新たに作成した試験管内アッセイ系で解析した。 (3)RIDAにおけるHda機能制御機構とクランプーHda-DnaA複合体における主要相互作用機構 変異DnaA蛋白質を新たに作成し精製標品を解析して、新たなHda-DnaA相互作用機構を見出し、論文発表した。また、クランプ変異体の解析からHda機能制御に重要な機能構造を同定した。 (4)ADP-DnaAをATP-DnaAに変換する「DARS」の主要機能メカニズム 新たに見いだしたDARS制御蛋白質のDARSとの相互作用動態を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複製開始複合体の分子解剖について、画期的なモデルを論文発表した(Ozaki and Katayama, NAR, 2012)。本論文では、研究競争となっている他グループのデータとも矛盾しない、統合的な新規モデルを、研究計画にしたがって行った独自の研究の成果に基づいて発表している。このモデルにより、2重鎖DNA開裂からヘリカーゼ装着までの基本機構を説明できる。また、これに加えて、新たなHda-DnaA相互作用機構についても、研究成果を論文発表した(Keyamura et al., JBC, 2011)。
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今後の研究の推進方策 |
今後も研究計画に沿って研究推進する。DnaAが形成する複製開始複合体の分子解剖については、ここ数年来、米国UCバークレーのBergerグループなどとの熾烈な研究競争が続いており、世界トップグループを形成している。上記の論文の続報(執筆中)を含め、研究成果の速やかな論文発表が求められる状況にあり、論文執筆により多くの時間を割けるよう、できる限り対応したい。
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