リボソームは、すべての生物に不可欠なタンパク質の合成装置である。本研究は、ゼブラフィッシュを用いてリボソームの異常に起因する「リボソーム病」発症の分子機構を解明することを目的とする。 1. RP/p53二重欠損モデルの解析 リボソーム病発症とp53の関連を調べるために、ゼブラフィッシュでリボソームタンパク質(RP)遺伝子とp53の両者を同時に欠損したモデルを作製した。Rps3、rps24、rpl35、rpl35a、rplp1の5種類のRP遺伝子を、p53に変異を持つゼブラフィッシュでノックダウンした結果、頭部や尾部の形態異常に回復が見られた一方、赤血球の産生はほとんど回復しなかった。また、野生型においてRP遺伝子とp53を同時にノックダウンした場合も同様の結果が得られた。次に、リボソームの翻訳活性が発症に関与している可能性を検討するために、rpl35aをノックダウンしたDBAのゼブラフィッシュモデルに、タンパク質合成を活性化することが知られているアミノ酸(ロイシン、アルギニン)を処理したところ、形態の異常および造血異常ともに回復が見られた。これらのことより、DBAの発症にはp53に依存しない経路が関与しており、リボソームの翻訳活性そのものが重要であることが示唆された。 2. ポリソームmRNAの解析 リボソームによる翻訳調節機構を調べるためにリボソームと結合したmRNAを次世代シーケンサーで解析した。rps19をノックダウンしたDBAモデルおよびU26 snoRNAの発現を抑制したRNA修飾欠損モデルからポリソームを調製し、リボソームに結合したmRNAの量的変動を調べた。その結果、DBAモデルおよびRNA修飾欠損モデルにおいて翻訳効率が変動(2倍または1/2)したと考えられる遺伝子を各々246個と252個同定した。今後、パスウェイ解析等でこれらの遺伝子を絞り込むことにより、リボソーム病発症に重要な因子が同定されると期待できる。
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