これまでに超好熱性アーキアであるPyrococcus furiosusをモデル生物として用い、同アーキア由来でRNA鎖の連結に関わると考えられる3種の酵素を生化学的に解析して来た。それは、 (a) 2'-5' RNAリガーゼ様のPF0027タンパク質。 (b) T4 RNAリガーゼタイプのPF0353タンパク質、及び(c) RtcBリガーゼタイプのPF1615タンパク質 (単体でtRNAリガーゼとなる)である。 本年度に以下の新たな知見を得た。(1) P. furiosusの全細胞抽出液中に、PF1615タンパク質のC末端側約5 kDaを特異的に切断するプロテアーゼ活性を見出した。同プロテアーゼ活性は基質として他のRNAリガーゼ2種を認識しなかった。(2) C末端を人工的に欠いたPF1615遺伝子は大腸菌での発現誘導が著しく低下し、その遺伝子産物はRNA ligase活性がほとんど検出されなかった。(3) 本プロテアーゼは、阻害剤の実験からキモトリプシン様セリンプロテアーゼと類推され、ゲル濾過カラムクロマトグラフィーより推定した分子量は約400 kDaであった。(4) PF1615タンパク質がホモオリゴマーを形成することを確認した。 また、本研究と平行する形で以下の知見を得た。(5) メタゲノム解析から、tRNAの分断化やtRNAイントロンの獲得には、トランスポゾン様の因子が関与する可能性があることを示した。(6) アキーアのゲノム解析から考案したtRNA遺伝子の予測法を応用することで、線虫類で特異的に進化したと考えられる新規のtRNAファミリーを見出し、nev-tRNAと命名した。
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