研究課題/領域番号 |
22370067
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
仁木 宏典 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 教授 (70208122)
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キーワード | 細胞壁 / 桿菌 / ペプチドグリカン / アクチン / 球菌 / 細胞幅 |
研究概要 |
RodZの細胞質ドメインの機能の解明をめざし、特に細胞質側ドメイン内のHTH構造の機能と、ペリプラズム側のドメインの2個所の機能の解明を行った。これまでの研究から、細胞質側ドメインはMreBと相互作用するために必要な領域であることが明らかになった。他方、ペリプラズム側のドメインはペプチドグリカン合成酵素らとの相互作用が予想されるものの、生化学的な実験根拠はなかった。そこで精製したRodZと精製したペプチドグリカンを用いて、RodZのペプチドグリカンへの結合活性を検証した。その結果、RodZのペリプラズム側ドメインはペプチドグリカンに直接結合することが明らかになった。この結合は、バンコマイシンにより阻害された。バンコマイシンは、ペプチドグリカン合成中に生じるD型アラニンのジペプチドに結合する。このことから、RodZも同じ部位を認識していると考えられる。細胞内でのRodZの動態の観察から、細胞分裂時に分裂面にRodZが集積することを見いだした。分裂面は、ペプチドグリカン合成が活発な部位であり、当然、D型アラニンのジペプチドに富んでいる。以上の、生化学的な結果と細胞生物学的な結果から、RodZは細胞分裂時に分裂面に集まり、新規のペプチドグリカン合成部位と相互作用すると考えられる。RodZ遺伝子変異では、細胞長の萎縮が起こり、球菌化することを明らかにしている。さらに詳細な細胞計測により、細胞幅にも異常が生じていることが明らかになった。特に、ペリプラズム側ドメイン欠損変異では、ほぼ正常な細胞長にも関わらず、細胞幅が大きくなった。このことから、RodZの分裂面への集積とペプチドグリカンとの相互作用は、細胞幅の制御という生理的な意義があると考えられる。RodZは細胞長ばかりではなく、細胞幅の制御にも関与していると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RodZが、細胞長ばかりではなく、細胞幅の制御にも関与しているという結果が生化学的、細胞生物学的に示された。特に、D型アラニンのジペプチドへの結合は大きな発見である。
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今後の研究の推進方策 |
これまで細胞長の制御に関する遺伝学な研究は多くなされてきたが、細胞幅がどのようにして調節されているのかについては知見は乏しい。今回の研究により。細胞幅の調節は細胞分裂面で行なわれていることが示唆された。ここには、RodZの他にFtsZやMreBといった細胞骨格因子が集まっており、これらの相互作用が細胞の長さや幅の制御に深く関わっていると考えられる。細胞分裂面の大きさの制御を遺伝学と生化学的な解析で明らかにしていく。
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