高度好熱菌由来のSecDFの立体構造をX線結晶構造解析により明らかにし、立体構造に基づいた生化学的解析から、「SecDFは、自身のプロトン透過活性と共役した、非細胞質側ドメイン(P1ドメイン)の構造変化を介して、膜透過途上の基質タンパク質を引っ張る事により膜透過を促進している。」との新たな作業仮説を提案している。これを実験的に検証するために、本年度は以下の2つに研究を進め、成果を得た。 1)P1ドメインの構造変化をモニターする事が出来るin vivo光架橋と、プロトンアンカプラー(CCCP)あるいは、機能に必須な変異導入を組み合わせた実験より、SecDFのプロトン輸送活性とP1 ヘッドドメインの構造変化の間には、明確な相関関係がある事を示唆する結果を得た。 2)P1ドメイン中に膜透過途上の分泌タンパク質が結合するかどうかを検証するために、P1ドメインを対象にした網羅的なin vivo光架橋実験を進めた。その結果、P1ドメイン内に存在する細い溝に沿った位置に光反応性アミノ酸アナログpBPAを導入した複数の変異体において、分泌タンパク質MBP(マルトース結合タンパク質)との特異的な光架橋産物の形成を確認した。この溝が基質の結合部位として機能している可能性が強く示唆される。現在は、この領域に系統的に変異を導入し、機能に及ぼす効果を検討している。
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