研究概要 |
RAPLはMst1に結合し、抗原受容体やケモカインによるMst1の活性化に必要であり、RAPL, Mst1を欠損するとリンパ球のインテグリンを介する接着や移動に重要な働きをしている。意外なことに、RAPLノックアウトマウスでは加齢とともに抗2本鎖DNA抗体などの自己抗体価が上昇し,腎臓に免疫複合体が沈着しループス腎炎を発症した。1年以内に30%の割合でリンパ節および脾臓においてBリンパ腫を発症することが明らかになった。RAPL欠損B細胞およびRAPL欠損T細胞では,CDK2活性が2~3倍も上昇していた。しかしp27kip1は分解されず、細胞質に蓄積していた.p27kip1は核においてCDK2の活性を阻害できなければ,細胞増殖を抑制することができない。抗原刺激によって正常なB細胞ではp27kip1は数分以内に細胞質から核へと移行するのに対し,RAPL欠損B細胞では細胞質にとどまったままであった.正常なT細胞では抗原刺激後、p27kip1は核から細胞質へと移行するが,RAPL欠損T細胞ではその割合が2倍に増加していた。さらにp27kip1の核から細胞質への移行には10番目のセリン残基のリン酸化が必要であるが,RAPLはそのリン酸化を抑制することでp27kip1の核への移行を促進していることが明らかになった。p27kip1の10番目のセリン残基をアラニン残基に変換したp27kip1変異体をノックインしたRAPL欠損マウスでは自己免疫疾患やリンパ腫の発症が抑制された。Mst1欠損マウスはT細胞のみ増殖亢進がみられ、加齢すると自己免疫様症状を呈するが、p27の異常は見られなかった。Mst2による代償も考えられるので、作成中のダブルノックアウトマウスで調べる予定である。
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