研究課題/領域番号 |
22370075
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平良 眞規 東京大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (60150083)
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キーワード | ネッタイツメガエル / 原腸胚オーガナイザー / 転写制御 / ChIP-seq解析 / Lim1/Lhx1 / Otx2 / ヒストン修飾 / 発生準備エンハンサー |
研究概要 |
脊椎動物胚における原口と原腸胚オーガナイザーは基本的ボディプラン形成に重要である。この発生様式の進化過程を明らかにするため、本研究では原口とオーガナイザーに発現する転写因子に注目し、染色体免疫沈降シーケンス(ChIP-Seq)法を用いて、脊椎動物ネッタイツメガエル(Xenopus tropicalis:Xt)のおける転写制御機構の大規模解析を行い、さらに同様な解析を二胚葉動物イソギンチャク(Nematostella:Nv)や他の生物で行い、比較解析する。昨年度に引き続き本年度は以下の点を明らかにした。 1)抗体の準備:Nv_Lhx1の特異抗体を精製し、Nv_Lhx1を発現させたアフリカツメガエル(X.laevis:X1)胚を用いたウエスタンブロットにより特異性を確認した。市販の抗FoxA2抗体、抗Bra抗体を購入し検討したところ、抗FoxA2抗体がXlに利用可能であることを確認した。 2)昨年度同定したOtx2とLim1が結合するシス制御領域(cis-regulatory module:CRM)のヒストン修飾状態を、抗H3K4me1抗体、抗H3K27ac抗体を用いてChlP-seq解析で検討した結果、エンハンサー活性が予想されたtype I CRM、サイレンサー活性が予想されたtype II CRMのピストン修飾はいずれも予想通りのものとなり、我々の解析結果が強く支持された。 3)オーガナイザー領域を含む内胚葉と中胚葉に発現するVegTとMix1のChIP-seq解析を行った。いずれも多くのCRMでOtx2やLim1と共局在が認められ、4者の機能的関連性が支持された。それに加えて、VegTは内胚葉系列の組織や器官に後期発生過程で発現する遺伝子周辺のCRMにも結合しており、ヒストン修飾との関連性から、「発生準備エンハンサー」が示唆され、Gene Ontology(GO)解析の結果からも支持された。 以上より、転写制御機構の大規模解析により、Xt原腸胚におけるCRMを特徴づける多くのデータが得られ、次年度の解析に活かすことが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ネッタイツメガエルを用いて、オーガナイザー関連転写因子のChIP-seq解析から、オーガナイザー遺伝子の転写制御の実体が明確に示された点は計画以上に進展したと言えるが、原口に発現する転写因子の解析が、良い抗体が得られず進展せず、またイソギンチャクを用いたChIP-seq解析が準備段階でとどまっている点で、課題を残しているため。
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今後の研究の推進方策 |
H12年度は最終年度であり、転写因子SiaとFoxA2のChIP-seq解析のデータを得ることで、オーガナイザーに発現する転写因子の大規模解析のデータが出揃う。これらの転写因子の組合せとヒストン修飾、ならびにレポーター解析によるCRM活性(正と負、および発生準備エンハンサー)との関連性からCRMをグループ化し、各グループごとに「denovoモチーフ検索」を行うことでCRMの特徴付けを行う。これにより組織分化が開始する原腸胚期でのCRMの使い分けの分子メカニズムを明らかにする。これに加え神経胚でのChIP-seq解析を行うことで、原腸胚から神経胚におけるCRMの切り替えのメカニズムを明らかにする。以上の結果をイソギンチャクと比較するため、抗Nv Lim1を用いてNematostella胚での初めてChIP-seq解析を行う。以上の結果を論文で発表する。
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