研究課題
今年度の最も卓越した成果は、模様形成関連遺伝子の人為的な操作で、ゼブラフィッシュの模様を様々な模様に改変する事ができるようになった事である。我々のグループでクローニングしたCX418遺伝子は、ゼブラフィッシュのレオパード変異(模様が縞から斑点に変化する)の原因遺伝子である。この遺伝子のN端の配列は、チャネルの活性に影響を与えることがわかっているので、この部分に変異を加えた改変ギャップジャンクション遺伝子を、魚に導入し、どのような模様になるのかを調べた。その結果、予想以上に様々な模様が生じた。繰り返し模様の基本となる縞や斑点はもちろん、迷路模様、太い黄色縞と細い黒縞の混合模様、枝分かれの動く模様、豹柄、など、野生動物に存在するほとんどの模様が、1遺伝子の改編で再現できることがわかったのである。この結果は、次の2つの意味で非常に重要である。まず第一に、模様形成に関してギャップジャンクションの活性が最も重要である事、第二に、動物の模様はバラエティが有るように見えても、1遺伝子の変異で全て作ることができる事、である。第二の発見は、模様の進化を考えるときに極めて重要である。もう一つの重要なプロジェクトとして、インビトロ系での模様再構成系の確立を進めている。研究開始時点で、色素細胞のインビトロ培養系の構築を行ったが、現在までのところ、その中で模様形成を行えるまでには至っていない。最大の問題は、長期間培養が難しい事と、任意の密度で狙ったところに色素細胞を置く事ができない事である。前者の問題に関しては、引き続き、様々な方法を試しており、本年度中に改善することが期待される。また後者の問題に関しては、ピペットで細胞を集める技術の導入によりある程度めどがついている。完全な縞模様は望めなくても、近々にある程度の模様形成が、インビトロで行えるようになると期待している。
2: おおむね順調に進展している
ビトロの系では、まだ再構成には至っていないが、ビボの系で、ゼブラフィッシュの縞模様の自在な改変に成功している。これは、非常に大きな成果であると考えている。
現在、特に問題点は無い。
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