研究課題/領域番号 |
22370081
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松田 洋一 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (70165835)
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研究分担者 |
西田 千鶴子 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助手 (50106580)
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キーワード | ネッタイ爪ガエル / 爬虫類 / 鳥類 / FISH / 染色体地図 / マイクロ染色体 / 祖先核型 / 核型進化 |
研究概要 |
FISH法を用いて、ネッタイツメガエル(Xenopus tropicalis)の染色体に、アフリカツメガエル(X. laevis)の機能遺伝子cDNAクローンをマッピングし、95の遺伝子からなる染色体地図を作製した。その結果、ニワトリのマクロ染色体と対応する10の大きな遺伝連鎖群が、ネッタイツメガエルでも保存されていることを明らかにした。また、ネッタイツメガエルにはマイクロ染色体が存在していないにもかかわらず、ニワトリが持つマイクロ染色体の遺伝連鎖群が、ネッタイツメガエルの染色体においても保存されていることを明らかにした。これらの結果を、平成22年度に作成したスッポン(Pelodiscus sinensis)(2n=66)とシャムワニ(Crocodylus siamensis)(2n=30)の染色体地図、ならびに以前に代表者が作成したシマヘビ(Elaphe quadrivirgata)(2n=36)の染色体地図と比較した結果、羊膜類の共通祖先の核型は、ニワトリのマクロ染色体を構築する10の遺伝連鎖群と、少なくとも10対以上のマイクロ染色体によって構成されていた可能性が示唆された。そして、シャムワニでは、マイクロ染色体同士が融合することによってマイクロ染色体が消失し、一方、シマヘビでは一部のマイクロ染色体がマクロ染色体に融合することによってマイクロ染色体の数が減少した可能性が示唆された。また、四肢動物の共通祖先もマイクロ染色体を保有していたことが推定され、ネッタイツメガエルでは、マイクロ染色体がマクロ染色体に融合することによって、マイクロ染色体が減少した可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、ネッタイツメガエルにおいて、計150の機能遺伝子の染色体マッピングを完了する予定であったが、平成23年度は、当初の予定の約3分の2の遺伝子のマッピングにとどまった。 両生類の場合、羊膜類(爬虫類、鳥類、哺乳類)に比べて、細胞培養が難しく、また細胞増殖も遅いため、染色体標本の作製に多大な時間と労力を要した。また、継代培養の効率が良くないため、初代培で染色体標本を作製しなくてはならず、一度に大量の標本を作製するのが困難であることから、研究の進展が遅れた。しかし、95の遺伝子マッピングデータから、羊膜類に生じた染色体構造変化のパターンとそのプロセス、羊膜類ならびに四肢動物の祖先核型を推定することができ、大きな成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
FISH法を用いたネッタイツメガエルの染色体マッピングはすでに確立しており、これまでに95遺伝子のマッピングを終えている。また、マッピングに用いるアフリカツメガエル由来の遺伝子cDNAクローンはすべて単離されているため、残りの遺伝子の染色体マッピングは、染色体標本が作製でき次第、滞りなく進めることが可能である。 次年度は、ネッタイツメガエルの染色体マッピングが終了次第、アフリカツメガエルの比較染色体マッピングを開始する。二倍体のネッタイツメガエルに対し、アフリカツメガエルは異質四倍体であるため、2種間で共通の機能遺伝子の比較染色体マッピングを行うことにより、ネッタイツメガエル-アフリカツメガエル間の染色体相同性だけでなく、倍数化によって生じた同祖染色体対を同定し、倍数化後に生じた同祖染色体間の染色体構造変化のパターンを検出することが可能となる。これらの研究によって、異質四倍体化後に生じたゲノム・染色体進化のプロセスを、脊椎動物で初めて明らかにすることができるため、出来るだけ早く研究を開始する予定である。ツメガエルの細胞培養は難しいため染色体標本の作製には時間と労力を要するが、この点がクリアできれば、速やかに遺伝子のFISHマッピングを進めることが可能である。
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