研究概要 |
ミドリゾウリムシから単離した食胞(DV, digestive vacuole)を抗原にしてDV-IIIと工Vの食胞膜を標識するモノクローナル抗体を作製した。PV(perialgal vacuole)膜の分化時期については、次の3つの可能性がある。(1)DV-IVの食胞膜の出芽時期に出芽部分の膜がPV膜に分化する。(2)食胞膜から出芽した膜が切り離されてからPV膜に分化する。(3)クロレラを包む食胞膜由来の膜が宿主表層直下に接着してからPV膜に分化する。このうち(3)の可能性については、ゴモリ染色によって、宿主細胞表層直下に接着したクロレラ包膜内部に酸性フォスファターゼ活性が認められないことから、この時期にはすでに宿主のリソソーム融合阻止能力を持ったPV膜に分化した後であることが明らかになっており、(3)の可能性は否定されている(Kodama and Fujishima, Protist 160, 65-74, 2009)。そこで、得られた食胞膜特異的抗体を使った間接蛍光抗体法でDV-IVの出芽部分の膜が抗体で標識されるかどうかを調べたところ、出芽部分の膜だけが染色されないことが明らかになった。この結果は、(1)の可能性を強く指示している(投稿準備中)。しかし、DV-IIIとIVの食胞膜抗原は失ったが、PV膜の分化はまだ生じていない可能性を排除するととはできない。今後、PV膜特異的抗体の作製が必要である。
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