研究概要 |
筆者等はミドリゾウリムシと共生クロレラを使い、細胞内共生(二次共生)の成立過程を経時的に追跡できる実験系を確立して、共生の成立に必須な4種のチェックポイントの存在を発見した。この研究課題では、4種のチェックポイントの分子機構の解明を目的として実施し、これまでに、共生クロレラを包む宿主食胞膜由来のPerialgal vacuole (PV)膜を細胞表層直下に短時間で輸送する機構と表層直下に接着させる物質の存在が細胞内共生成立の最終段階として重要であることを明らかにした(Kodama and Fujishima, Protoplasma 231, 55-63, 2007)。さらに、表層直下に配列しているトリコシスト(刺胞)を除去してもPV膜に包まれたクロレラは表層直下に接着するので、トリコシストに接着しているわけではないことを明らかにし(Kodama and Fujishima, Protist 160, 319-329, 2009)、平成24年度には、PV膜が宿主細胞表層直下のミトコンドリア外膜に接着することを明らかにした(Fujishima and Kodama, Eur J Protistol, 48, 124-137, 2012)。また、強い遠心によって、PV膜で包まれたクロレラ、食胞、リソソーム等を細胞後端に分層させる技術を開発し、遠心終了後、わずか5分で元の位置にこれらが同調して戻る現象を発見した(Kodama and Fujishima, 投稿中)。これらの細胞構造の位置の回復は、原形質流動を阻害すると完全に阻害され、再配置の原動力が原生質流動であることが明らかになった。これによって、PV膜とミトコンドリア外膜との接着にどんな因子が必要かを解析する実験系が確立された。
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