研究概要 |
細胞内共生不能種のクロレラは、食胞からの脱出には成功するが、宿主細胞表層直下に接着することができない。さらにクロレラの細胞内共生能力は細胞壁の糖組成と一致すると報告されていたが、糖分解酵素と蛍光標識レクチンを用いた申請者らの実験結果は、細胞内共生能力が細胞壁の糖組成ではなく上記の接着能力で調節される現象であることを明らかにした。これによって、クロレラ包膜(PV膜)を細胞表層直下に短時間で輸送する機構と接着させる物質の存在が細胞内共生成立の最終段階として重要であることが明らかされた(Kodama and Fujishima, 2007)。そこで、PV膜と細胞表層構造との接着の仕組みを調べるために、接着と脱着を多数の細胞に同調して誘導する実験系の開発を行った。 クロレラを保持する宿主を適切な条件で遠心すると、多数の細胞に同調してクロレラを細胞表層から脱着させ、5分後には回復して同調接着ができる実験系の開発に成功した。宿主表層から脱着したクロレラは宿主細胞後端部に蓄積した。遠心後の回復時に微小管重合阻害剤を与えるとクロレラの接着が阻止された。この阻害過程を顕微鏡で観察すると原形質流動が阻害されることが明らかになった。したがって、クロレラ接着の駆動力は宿主の原生質流動であることが明らかになった (Kodama and Fujishima, Protist, 164, 660-672, 2013)。
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