研究課題/領域番号 |
22370087
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
石田 肇 琉球大学, 医学研究科, 教授 (70145225)
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研究分担者 |
弦本 敏行 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (60304937)
分部 哲秋 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 講師 (50124847)
増田 隆一 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (80192748)
米田 穣 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 准教授 (30280712)
太田 博樹 北里大学, 医学部, 准教授 (40401228)
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キーワード | 縄文時代人骨 / 琉球人 / アイヌ民族 / オホーツク文化人骨 / 頭蓋形態 / 生活誌 / 遺伝子 / 安定同位体分析 |
研究概要 |
頭蓋形態の3次元CT画像を構築し、人類学領域でも、このような画像を使って、頭蓋形態小変異を明らかに出来ることを明らかにした。 日本における古代人骨集団の脊椎関節症性変化を調査した。海獣狩猟・漁撈に特化した生業をもつオホーツク文化集団は、船の上の活動などが腰椎の関節症性変化発症に関与したものと思われる。久米島近世集団は、男女とも腰椎の関節症の頻度が高く、とくに椎体前縁部に関節症を多く認め、前かがみになるような農作業などの習慣的労働があったことを示した。オホーツク文化集団の寿命を調査した。その結果、50歳以上の長生きの個体も30%程度を占め、これまでのようにすべての個体が早く亡くなるわけではないことが示された。 沖縄の縄文時代人の特徴をまとめた。それによると、沖縄の縄文時代人は、本土の縄文時代人と違うところはほとんどなく、やはり、縄文文化を持つ人々として同じ形質を持っている。ただ、沖縄の縄文時代人は、目と目の間が平たいという特徴が見つかり、これは近世にも繋がる形質のようである。成人男性の平均身長が約153cmと、低身長で、全国的に見ても157cmと身長が低いが、南低北高の傾向がはっきりみえた。 現代人のY染色体の遺伝子を比較すると、アイヌ民族19人の持つ10つのタイプのうち、2つが沖縄本島と宮古島の人と同じであった。これは、琉球人とアイヌ民族との強い類似を示すものと思われる。 古代DNA分析として、耳垢遺伝子ABCC11の単一塩基多型分析を行った。乾型対立遺伝子の頻度は、北海道縄文、続縄文、アイヌ集団、オホーツク文化人の順に高くなることが明らかとなった。この結果は、縄文時代より後に、乾型対立遺伝子を高頻度にもつオホーツク文化人から北海道へ遺伝子が緩やかに流れたこと、または、遺伝的浮動により北海道集団において遺伝子頻度が変動したことを示唆する。 これらの研究は、アイヌ集団は形質的に北海道の縄文時代人の末商であるもの、縄文時代の後の過程でオホーツク文化人集団がアイヌ民族の成立に深く関っていることを示した。また、沖縄の人々は、独特な形質を持ち、琉球-アイヌ同系説がほぼ確定できたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
琉球と北海道の古人骨については、系統ならびに生活誌研究が進み、また、琉球の現代人の遺伝学研究も進展している。これらの成果は、査読付き英文原著論文10本に発表された。また、一般の著書や考古学系雑誌にも公表されている。これらのことから、研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
縄文時代人骨を含めた、古人骨研究については、四肢骨の形態研究を発展させること、系統については、九州地区の古代DNA解析を進展させる。 琉球の現代人の遺伝学的分析については、大規模なゲノム解析を進める必要があると考える。さらには、古人骨の形態解析のために、骨形態の遺伝性の研究を新たに開始しなければならない。
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