1)チェコ-日比較質問紙研究では、女子大生について日本では夜型化による抑うつ化の問題が、チェコでは、急激な日長の減少による秋季における精神衛生の悪化、とりわけ、怒りやキレるなど、攻撃性因子の悪化が見られた。幼児では、冬季のチェコの幼児のうち、夜型でしかも肥満の子どもが20%を占めた。 2)朝食介入と朝食摂取直後の光暴露介入を行った上で、夜間照明として色温度の低い白熱灯色(オレンジ系)照明の使用によって、夜間唾液メラトニン濃度が2週間後に数倍から10倍のレベルに高まり、高知県内の運動部所属大学生のスムーズな入眠が促進され、睡眠の質・精神衛生を改善させた。成人でこれだけ明確なメラトニン分泌への効果があることがわかったのは予想以上の成果であった。これにより、早寝による成長ホルモンの十分な分泌による疲労や損傷からの回復、十分なレム睡眠確保による新技術習得の定着化など、運動パフォーマンスの向上が期待できる。 3)研究協力者4名共、航海参加中の睡眠覚醒リズムが規則的になった。研究航海という、特に仕事と食事の時刻が徹底して規則的な環境に身を置いた場合、極めて規則正しい睡眠覚醒リズムを手に入れることができることが証明されたことは、食事や学校の規則正しいタイムスケジュールがいかに重要かを示せた点で総合睡眠改善プログラムの科学的根拠となる。 4)睡眠健康改善プログラムを策定した。とりわけ本年度は、関連研究分野の知見と原田らの研究グループの研究成果を収れんさせた形で、保護者啓蒙用リーフレット=「早ね、早起き、朝ごはんで3つのお得!」を完成させた。特に乳幼児の母親に対して、「仕事の成績アップ!メタボ解消!美容に良い!」を科学的根拠と共に示せている点で評価できる。 5)親子で2泊3日の宿泊による対照実験を行った。1日目の夜はDim Light条件(約30lx)で過ごし、2日目の夜は、白色蛍光灯による光曝露(約540lx)を行った。就床時の唾液メラトニン濃度は大人では、蛍光灯光によって減少の傾向のみ見られたが、子どもでは明らかに、分泌抑制の効果が見られた。「子どもの夜間照明として、蛍光灯を避けるべき」という睡眠健康改善プログラムの1項目に重要な科学的根拠を加えた。
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