研究課題/領域番号 |
22370089
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
原田 哲夫 高知大学, 教育研究部・人文社会科学系, 教授 (60260692)
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研究分担者 |
樋口 重和 九州大学, 芸術工学研究科, 教授 (00292376)
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キーワード | 子ども / 睡眠健康 / 環境介入 / メラトニン / 個人差 / 高色温度光 / 概日リズム位相 / 啓蒙リーフレット |
研究概要 |
1.大学生(運動部員および研究船乗船学生研究者)を対象にした介入フィールド実験 大学サッカー部を対象にした総合介入フィールド実験(アスリートの為の生活改普リーフレットの効果検証)を行った。競技力の高いアスリート達のみ、積極的に生活改善プログラムに取組み、1カ月後で朝型化や精神衛生の向上を見せた。また、"夜間のゲーム利用を休む"取組日数が多い程、4週間後の総合的競技パフォーマンス改善値が高かった。本リーフレットの健康改善効果が一定程度証明された。海洋地球研究船「みらい」航海(2010年9月~11月)、学術研究船「白鳳丸」航海(2011年2月~3月)に参加した計8名の乗船(学生)研究者を研究協力者として航海期間とその前後で睡眠習慣を比較した。8名共、航海参加中の睡眠覚醒リズムが規則的になった。本研究結果は、食事や学校の規則正しいタイムスケジュールがいかに重要かを示せた点で総合睡眠改善プログラムの科学的根拠となる。 2.乳幼児・低学年(保護者啓蒙用リーフレット:朝型生活がなぜ得で、どうしたらよいのか)を用いた介入研究 7月の1カ月間リーフレットの内容に沿った取組を要請し、その効果を検証した。取組期間中や事後の「休テレビ」「休ゲーム」取組が積極的な程、幼児、保護者共朝型であった。事前と比較して、事後の幼児は朝型で低い肥満度の傾向があり、取組総合得点が高い程、事後幼児は朝型であった。今回の介入によって、幼児の体内時計の位相が前進し、肥満度が下がったと考えられる。保護者用リーフレットの健康改善効果も一定程度証明された。 3.夜間家庭照明光曝露が、子どものメラトニン分泌量と概日リズムに及ぼす影響 小学生の子ども20名(9.7±1.4歳)を対象に、唾液中メラトニン濃度、睡眠に関する質問紙、家庭照明(照度,色温度)を調べた。家庭の照明環境下で測定した就寝前の子どもの唾液中メラトニン濃度は、薄暗い環境で測定した時の値に比べて有意に分泌量が抑制された。高色温度の蛍光灯を利用する家庭の子どもは、そうでない子どもより概日リズムの位相が後退していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究の目的に記載された、1)~4)が順調に行われ、その研究成果は2011年10月に京郁で開催された「第6回睡眠科学国際会議:The 6th world Congress of the World Sleep Federation (Worldsleep2011)」で4つの論文、国際会議(ヨーロッパ時間生物学会議)で論文5件がそれぞれ公表され、関係科学雑誌に3論文が掲載された。掲載論文のImpact factorは、5.6ポイントに達した。他、、テレビ出演3件(RKC子育て応援団)、ラジオ出演1件(RKCラジオ、早ね、早起き、朝ごはんの科学的根拠など)と当初の予想を上回る公表件数を実現したことも実施度(1)の根拠となる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、睡眠健康増進プログラム策定の為の、本科研プロジェクトの最終年となる。乳幼児対象や大学生を対象とした、介入研究はいずれも大成功をおさめ、その貴重な研究データは睡眠健康増進プログラムの作成に全てフィードバックされる。 来年度の残された介入研究は、小中学生とりわけ、思春期の子ども達を対象とした介入研究である。既に作成し、睡眠健康増進に有効であることが検証された、「生活改善リーフレット」を教材とした、授業介入を行う予定である。焦点は、「約1日の生活リズムの安定によって、約1か月の女性の生理周期の安定と女性の心身両面の健康増進がもたらされる。」という点である。これは先行研究(Takeuchi et al.,2005)に基づくものである。尚、本授業介入研究については、その内容から鑑み、十分な倫理的配慮を経たうえで、慎重に進める必要がある。これら、全ての介入研究の成果は、全て、睡眠健康増進プログラムの策定に収れんされなければならない。
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