研究概要 |
本研究の全体のパラダイムとして、「サイン負荷法」を用いた全身的な生理機能の解明(肺呼吸-循環-筋肉(内呼吸)といったヒトの全身に渡る協関)を明らかにすることを目的としている。さらに歩行を、ヒトの身体活動を支える統括的な生理機能を含んだ全身的な協関とした視点でとらえている。平成22年度ではサイン波負荷法の歩行実験セットアップを完了し(福岡、福場)、歩行とサイクリングの運動様式による生理的な特異的な応答から、機能的な潜在性を探求した(福岡、古賀)。両運動の平均代謝量(O2消費量:約1000ml/min)を同一になるよう設定した。サイン負荷の周期特性を明らかにするため、それぞれ異なる周期1,2,5,10分の4種類を設定した。その結果、換気量(VE)、酸素摂取量(VO2)、二酸化炭素排出量(VCO2)の動的応答特性は、歩行運動時の方が有意に加速することが明らかとなった。同時に、循環動態の心拍応答も歩行運動時に速やかであることが分かり、歩行とサイクリングの運動様式の相違によって、肺呼吸-循環-筋肉の全身的な協関が大きく変化することが示唆された。また、本研究の大きな課題でもあった肺呼吸での換気応答への歩行の脊髄レベル中枢(supraspinal locomotor center : SLCまたはCPG)を介した制御について、サイクリング運動と比較した結果、歩行運動ではその関与を示唆する大きな呼吸亢進も観察され、今後歩行パターンを解析し、neural drive-respiratory couplingの解明を進める。平成23年度以降、諸条件(低酸素、歩行様式、および加齢)の影響を観察することで、肺呼吸-循環-筋肉といったヒトの全身的な協関を詳細に検証できると考えている。
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