研究概要 |
【背景】近年、高齢者の登山がブームとなっています。起伏の激しい山道のモデルとして、サイン負荷法がある。【目的】本研究は高齢者のロコモーションに伴う肺ー循環ー筋までの全身的協関を明らかにするために、サイン負荷法をもちいた。【方法】対象は高齢者15名と若年者13名とし、心拍数、酸素摂取量(VO2)、二酸化炭素排出量(VCO2)、換気量(VE)をbreath-by-breathで測定し、フットスイッチからピッチとストライドを測定した。トレッドミルのスピードを若年者では6~3km/h、高齢者では5~3km/hの範囲でサイン状に変化させた。なお、サイン負荷の周期を1, 2, 5, 10分の4種類を設定した。【結果】1)高齢者のロコモーションは、スピードが上がるとピッチ依存となり、ストライドが短くなることが分かった。2)HR、VO2、VCO2、VEにおいて若年者よりも高齢者の振幅応答が小さかった。しかし、一方でVO2、VCO2、VEのPSは両群間に有意な差はなかったことから、加齢の影響は振幅応答に現れた。また、 HRの応答が高齢者では顕著に遅くなるり、エネルギー代謝応答に比べ、循環応答の指標であるHRの応答が加齢の影響を受けやすいことが分かった。3)安静時のHRの変動係数(CVHR)とHRのamp ratioの相互関係より、若年者では有意な相関があり、高齢者では相関関係はみられなかった。このことから、HR応答調節は若年者で主に迷走神経によって、高齢者では主に交感神経によって行われていることが推察された。4)2分周期は神経性因子の中脳歩行誘発野(MLR)や脊髄中枢 (SLC)などの歩行中枢由来の換気亢進を観察できた。【結論】高齢者ではサイン負荷に対する肺ー循環ー筋までの全身的協関の動特性が劣化する可能性が示唆された。
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