研究課題/領域番号 |
22380001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
貴島 祐治 北海道大学, 大学院・農学研究院, 教授 (60192556)
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キーワード | イネ / イネツングロ病 / RTBV / ERTBV / ジャポニカ / インディカ / Oryza glaberrima / AT連続配列 |
研究概要 |
平成23年度はイネ系統間のERTBVの多型検出とERTBVの多型に基づくツングロ病抵抗性の評価を行うことを計画し、以下のような成果をえた。 1.ジャポニカ稲(日本晴)のゲノムDNA配列を利用して、88サイトと特定されたERTBVの有無を区別できる52セットのPCRマーカーを作製した。 2.上記52のERTBVマーカーを用いてジャポニカ稲4系統、インディカ稲3系統、ルフィポーゴン(野生イネ)稲3系統、合計10系統を対象にPCRを行った。その中で22個のマーカーがジャポニカ稲とインディカ稲系統全てでERTBVの挿入が検出され、30個はジャポニカ稲特異的なマーカーであった。従って、ERTBVはイネの種分化以前から分化後に渡ってイネゲノムに挿入されたことを示唆するデータを得た。 3.前年度までに九州大学と共同でO.glaberrima系統とジャポニカ系統の間で3回戻し交配自殖系統BC_3F_2集団を作製した。国際イネ研究所(IRRI)Choi博士のもとでこれらの系統に対するツングロウイルス(RTSV/RTBV)感染実験を行い、ウイルスの病徴を評価した。 4.上記で得られたデータは、病徴の程度に応じて評価された。親系統のジャポニカ稲(T65)系統は、ツングロウイルスの感染に対してmildな病徴を示すのに対して、O.glaberrima IRGC103777系統はsevereな病徴を示す。T65とIRGC103777それぞれを反復親にした2つのBC_3F_2集団では、予想通りT65を反復親にした集団では相対的に強い個体が多く、IRGC103777を反復親に持つ集団では、多くが顕著に弱い傾向にあり、ツングロ病の病徴とERTBVのコピー数と関連する可能性も示唆された。しかし、T65を反復親にした集団の中にも、顕著に弱い個体が出現することや,IRGC103777を反復親に持つ集団でも強い個体が現れるなど、単純にはコピー数だけで説明できない結果であった。そこで、各ERTBV断片と病徴との関連性をQTL解析法で調査したところ、特定の断片とRTBVのウイルスの増殖との相関を得た。相関を示唆する断片は複数あるが、今後、これらに着目してツングロ病抵抗性との関係を調査して行く予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
九州大学と共同で作成したO.galberrima系統とジャポニカ系統の間のBC_3F_2集団を利用して、RTBVの感染実験から特定のERTBV断片を持つ系統にウイルス抵抗性を示す傾向が得られたことは、当初の目的以上の成果といえる。
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今後の研究の推進方策 |
1.Oryza属におけるERTBVの起源の特定からRTBVの病原発生地域を推定する。これは、当該ウイルス病の耐性系統を探索するために今後重要となる。 2.ジャポニカの持つ基本的なツングロ病への抵抗性とERTBVの関連性を平成23年度に得られた成果をもとに具体的に検証する。
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