1. Oryza属におけるERTBVの起源の特定からRTBVの病原発生地域を推定する。 イネゲノム(O. sativa 日本晴)のERTBV配列を88箇所で特定し、これらの中でジャポニカおよびインディカ系統で共通に検出されたERTBV断片について、由来のはっきりしている世界の栽培イネ65系統とルフィポーゴン(野生イネ)25系統を用いて、ERTBV各断片の存否を明らかにし、イネ系統の分布とERTBV断片を対応させた。その結果、ERTBVは4つに大きく分かれ、明確に異なるウイルス系統樹を持つことを示した。各ERTBV断片の系統関係とイネの由来からERTBVの起源は、中国南部のイネ系統から由来した可能性が高く、一部インディカでは東南アジアからの野生イネと強く関連した。また、最も古いERTBVのタイプはアフリカ起源のOryza種から見いだされたものと似通っていたことから、このタイプはアフリカ起源であると予想できた。 2. ジャポニカの持つ基本的なツングロ病への抵抗性とERTBVの関連性を具体的に検証する。 アフリカ稲(O. glaberrima) WK18系統と台中65系統の間で3回戻し交配自殖系統BC3F2 集団を作成し、RTBV感染実験に使った。BC3F2集団へのRTBV感染実験の結果、染色体5番にWK18系統の断片では感受性で台中65の断片では抵抗性を示す領域が見いだされ、この染色体領域をqTDR5と名付けた。この中にはERTBVが1つ存在していた。さらにqTDR5のヘテロ接合個体を自殖させ、qTDR5がWK18型と台中65型に分離した後代集団に再びRTBVを感染させると、抵抗性と感受性がqTDR5の台中65型WK18型との違いで分かれることを確認した。したがって、台中65系統の持つツングロ病(RTBV)に対する抵抗性の遺伝因子は、qTDR5に起因することを明らかにした。
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